周東に死球を当て…悩み続けたオリ権田 救われたまさかの一言「力が入るでしょう」

4月23日のソフトバンク戦で周東に死球→右腓骨骨折で離脱も…
チームは違えど、球界の先輩の配慮に救われた思いがした。オリックスの権田琉成投手は、プロ初登板で死球を与えたソフトバンク・周東佑京内野手の言葉に救われ、勝負のマウンドに登っている。
「申し訳ない思いでいっぱいだったので、少しは気持ちが楽になりました」
権田がほっとした表情でほほを緩めた。
アクシデントは、4月23日のソフトバンク-オリックス戦(みずほPayPay)で起きた。権田は2-5の6回から3番手で登板。1点を与え、2死三塁で迎えた周東に対し、7球目のストレートを右膝付近に当ててしまった。「内角を攻めたストレートを引っ掛けてしまいました。お客さんもいっぱいで、相手打者はテレビで観た選手ばかり。これまでにないくらい、緊張しました」と振り返る。プロ入りして初めて上がる1軍マウンドが、敵地という慣れない環境も手元を狂わせることになってしまった。
立ち上がれずトレーナーらに両肩を支えられベンチに下がった周東は、そのまま途中交代。この日、初回に三塁への内野安打を放ち、球団タイの開幕19試合連続安打を記録していた主力選手に与えた死球は、権田にとってもショックだった。
上田西高(長野)、明星大、TDKから2024年ドラフト7位でオリックス入り。同期入団の高島泰都投手(ドラフト5位)、古田島成龍投手(同6位)とは、同学年で大卒、社会人出身と共通点が多く、背番号も96(高島)、97(古田島、今季から35)、98と並ぶ。1年目から1軍で活躍した2人に対し、権田はシーズン終了直前の10月1日に1軍登録されたものの、登板機会は巡ってこなかった。
待ちに待ったプロ初登板で、スター選手に与えた死球。悶々とする時間を過ごす中で、SNS上で見た周東のコメントが深く落ち込む気持ちを少しだけ軽くしてくれた。翌日、楽天戦のため訪れた空港で、周東はメディアに対し「初登板でピンチの場面。力が入るでしょう」と、権田を気遣う発言をしてくれていたのだった。
その後、周東は右腓骨骨折が判明し戦列を離れたが、5月6日には福岡県筑後市の球団施設で1軍復帰に向けてスタートを切った。権田も3日後に登板し、5月4日の楽天戦(京セラドーム)では回またぎでも起用されている。
「練習を再開されたようで安心しました。よかったです」と早い回復を願う。今年、目標とする漢字一文字は、気合の「気」。「同じ場面で、次に対戦した時も攻めると思います」。プロとして逃げずに攻める姿を見せ続けることが、周東の配慮に対する答えだ。
○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。
(北野正樹 / Masaki Kitano)