廣岡大志が“切り込み隊長”に定着 「何も変えない」と語る背景にある飛躍の要因

オリックス・廣岡大志【写真:北野正樹】
オリックス・廣岡大志【写真:北野正樹】

3球団目、10年目で見せた覚醒

 オリックスの廣岡大志内野手が、切り込み隊長として存在感を示している。「1番・中堅」で先発起用された4月22日のソフトバンク戦(みずほPayPayドーム)で、今季初本塁打を含め2安打を放つと、以後、1番の8試合で31打数12安打、2打点、打率.387。うち4試合では第1打席で安打を放ち、チームを勢いづかせている。

 廣岡は大阪市出身。奈良・智弁学園2年時に春夏甲子園に出場。1学年上にはクリーンアップを組んだ巨人・岡本和真内野手、1年後輩には阪神・村上頌樹投手がいる。2015年ドラフト2位でヤクルトに入団し、1年目のDeNA戦で引退試合のため登板していた三浦大輔投手から3ランを放ち「初打席初本塁打」を記録。ヤクルトでは定位置を奪えず、2021年にトレードで巨人に移籍し、2023年からは活躍の場をオリックスに移した。

 長打力を秘めた積極的な打撃と、内外野を守れるユーティリティさが評価されているほか、全力疾走とひたむきにボールを追う懸命なプレーで知られる。

 プロ10年目の今季、目標とした「開幕スタメン」はつかめなかったが、初めて先発起用された4月9日のソフトバンク戦(京セラドーム)で3安打。28歳の誕生日を自ら祝ってアピールに成功し、先発のチャンスをつかんだ。

 好調の秘密を、廣岡は「(打撃で)何も変えたものはありません。やるべきことを継続して、準備をしているだけ。余裕なんてありません。ただ、必死でやっているだけです」。シャイな性格で自己アピールをすることが苦手なこともあってか、素っ気ない。

「持っているものは素晴らしいんです。それが、今、タイミングよく結果として出ているだけです」というのは、川島慶三・1軍打撃コーチだ。「技術的には特に何かを変えたわけではありません」と口をそろえるが、川島コーチは出場機会の多さを打撃向上の要因に挙げる。

「彼の場合、過去にチャンスが今のようにあったかというところです。今は試合にずっと出ているので、結果を出しやすいんじゃないですか。たまに出て、結果を出すのは難しいですから。そこがこれまでと、ちょっと違うところじゃないでしょうか」。数多く打席を与えてもらうことの安心感が打席の中での余裕につながり、快打を生むという好循環になっているというわけだ。

 川島コーチも「1回のチャンスで打てなかったら、また試合に出られなくなるとか、そういう不安とかは多少、少ないのでは。(固め打ちも)まとまった打席があるからというのもありますね。精神的にも安定しているんじゃないですか。結構、メンタルが大事ですから。そいうところもでかいと思います」と、打者心理を説明する。

 廣岡は「何とか塁に出ることだけを心掛けています」と力を込める。ヤクルト時代に「兄貴」と慕った坂口智隆さんのように、泥臭いプレーで打線を引っ張る。

○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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