岸田護監督の誕生日に起きた“奇跡” 幸運を呼んだ「青い薔薇」…当日のドタバタ舞台裏

オリックス・岸田監督の誕生日に起きた“奇跡”
花言葉の通り“奇跡”が起きた。オリックス・岸田護監督の44歳誕生日に本拠地・京セラドームで行われた、10日のソフトバンク戦で、このカードの連敗を「12」でストップさせた。フランスから紆余曲折、試合直前に岸田ファンから届けられた「青い薔薇」がチームに幸運をもたらせた。
5回にソロ本塁打を放った紅林弘太郎内野手が、1本の青い薔薇を左手に持ちベンチ前でナインjから祝福を受けた。観客席やテレビ観戦のファンには、紅林が持っている意味が分からなかった青い薔薇。送り主は、現役時代から岸田監督を応援するファンで作るオフ会のメンバーだった。
監督となって初めての誕生日を本拠地で迎える岸田監督を応援しようと、約30人での観戦が計画され、幹事の蟹守宇米美さんが「奇跡」や「夢が叶う」という花言葉の青いバラを贈ることを発案した。
本数は22本。「優勝というファンの夢を叶えてほしいのと、22本は『あなたの幸運を祈ります』という花言葉から決めました」と蟹守さん。インターネットで調べた長野県内の花店に、誕生日の5月10日午前中に大阪市内の自身の自宅に届くように発注した。
ところが、花店がフランスから取り寄せ運送業者に託した青い薔薇は、違うトラックに乗せられ京都府内へ。業者から届いた配達連絡は「10日の午後6時以降」だった。試合前に球場受付に預け、岸田監督に届けるつもりでいたメンバーは落胆して天を仰いだという。
そこから“奇跡”が起こり始める。窮状を知った業者が特別便で対応してくれ、午後2時に到着。オフ会の会長を務める松岡良伯さんや片岡武彦さんと3人で球場を訪れると、対応した球団職員の計らいで岸田監督に直接、青い薔薇を手渡すことができた。
当初、監督室に飾られる予定で、一般に知られることのなかった青い薔薇の存在は、5回にソロ本塁打を放った紅林弘太郎内野手がベンチ前で受け取った1本を左手に持ちナインらの祝福を受けたことで、スタンドのファンの目に触れることになった。
「今日は監督の誕生日。すごくいい思い出に残る誕生日にしよう」
ここにも、ドラマがあった。試合前の円陣で、声出しを担当した水本勝己ヘッドコーチが「昨日のことは昨日のこと。(シーズン)143試合戦い、最終的にそこで結果が出るんやから」と、前日の1‐11の大敗からの切り替えを促した。「今日は監督の誕生日。すごくいい思い出に残る誕生日にしようや」と続けたその時、齋藤俊雄・戦略コーチが1本の青い薔薇を岸田監督に差し出した。
驚く表情を見せた岸田監督。その理由を齋藤コーチは「青い薔薇が届けられたのは知っていました。スタッフが監督室に飾ろうと花瓶を準備しているのを見て、声出しの(水本)ヘッドが誕生日に言及した時に監督に渡そうと思い、スタッフに1本、ベンチ裏に持ってくるようにお願いしたんです」。サプライズが成功し喜色満面の表情で明かす。
薔薇はそのままベンチに飾られ、首脳陣の間で「ホームランを打った打者に手渡そう」となって、紅林が手にすることになった。「そんないきさつで紅林選手が手にしたとは知りませんでした。監督室に飾っていただくだけでもありがたいのに。ベンチにも飾っていただいたおかげで、ソフトバンク戦に勝つことができたのかもしれません。誤配で試合に間に合うかわからなかったのですが、多くの“奇跡”が起きてくれてよかった」と笑顔で振り返る蟹守さん。
試合後に「青い薔薇の御利益はありましたね」と笑顔で語った岸田監督。ヒーローインタビューで、紅林は「使い回しされました(笑)」と笑いを誘ったが、その青い薔薇は岸田監督が大事に抱えて監督室の花瓶に戻し、22本の束になって今もチームや選手の「幸運」を願って輝いている。
○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。
(北野正樹 / Masaki Kitano)
