「痛くない投げ方を知る」 161キロ剛腕の原点…夢中で取り組んだ“遠投”のメリット

2023年新人王の山下舜平大「中学までは肩の強さだけで投手をやっていた」
小、中学生は技術だけに走る必要はない。投手力向上を目指す少年少女に向け「伸びしろを大事にしてほしい」と語るのは、最速161キロを誇るオリックスの山下舜平大投手だ。技術、理論など多くの情報が溢れる時代だが「順番を間違うとあまり効果を得られないこともある」と、自身の過去を振り返りながら子どもたちにアドバイスを送る。
22歳の山下は福岡大大濠高から2020年ドラフト1位でオリックスに入団し、3年目の2023年に開幕投手を務め9勝をマーク。新人王に輝いた。今年は腰のコンディション不良で2軍調整が続いているが、最速161キロの直球とカーブ、フォークを武器に将来のエースとして期待されている。
「中学までは肩の強さだけで投手をやっていた」と振り返り、本格的なトレーニングに取り組んだのは高校からだという。体を大きくするために食生活を見直すとともにスクワットや体幹トレーニングなどを研究し、一気に素質を開花させた。
ただ、小中学生に向けては「僕もそうでしたが、知識を体で表現するのは限界があると思う」と指摘する。山下が最も意識したのが「遠くに強く投げる」こと。夢中になって取り組んだのは遠投だった。

追求したいベーシックな部分…「一番大事じゃないかと思っています」
「最初はベーシックな部分を追求する。マウンドで『どうやって投げるのか』ではなくて、体を大きく使い投げること。一番は痛くない投げ方を知る。遠投は痛いと投げられないので。小中学生は一番伸びる時期。打撃なら遠くに飛ばす、遠投なら遠くに投げる。そこには欲も出てきます。そういうのが一番大事じゃないかと思っています」
まずは単純な練習方法から、強く投げられる「感覚」を得る。そこからカテゴリーが上がるにつれ土台ができ、知識を落とし込んでいく。“順番”を間違わないことが重要になってくる。
プロになった今でも言葉を体現するのは難しいという。例えば投手の指導でよく言われる「足を使って投げる」も、「今の自分でもそこまではよく分からないです」と苦笑する。下半身の体重移動、右投手なら右の股関節に乗る感覚は、実際に体を動かすことでしか得られないと考えている。
「僕ならゴロ捕球で逆シングルの体勢を取ります。そうすれば軸足、腰に体重が乗る。そういった方法なら子どもたちにも分かりやすい。意識しなくても体が覚える。言葉だけでは実際にどうやって体を使うかは分からないと思うので」
まずは無理することなく野球を楽しみ、体の成長とともに技術を上げていく。次世代の野球界を背負う子どもたちの成長を、山下は心から願っている。
(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)
球速を上げたい、打球を遠くに飛ばしたい……。「Full-Count」のきょうだいサイト「First-Pitch」では、野球少年・少女や指導者・保護者の皆さんが知りたい指導方法や、育成現場の“今”を伝えています。野球の楽しさを覚える入り口として、疑問解決への糸口として、役立つ情報を日々発信します。
■「First-Pitch」のURLはこちら
https://first-pitch.jp/
