“第4の捕手”からの脱却…オリ福永奨の現在地 心に刻む4年目の覚悟「いい形で成長」

「福永でいってみようか」と言ってもらえるように…
オリックスの4年目、福永奨捕手が目標としてきた「勝てる捕手」として存在感を示している。
「向こうの軸のバッターを抑えられたのがよかったと思います。ピンチで曽谷(龍平投手)のギアも上がりましたし。なんかずっと負けっ放しというのも、僕としても気持ちが悪いし、(交代するまで)0で抑えられてよかった」。5月10日のソフトバンク戦(京セラドーム)で先発マスクを被って曽谷をリードし、このカードの連敗を「12」でストップさせた福永が、ちょっぴり胸を張った。
福永は、横浜高で1年春からベンチ入りし、3年夏の甲子園では3ランを放った強肩強打の捕手。国学院大4年時には主将で4番として、東都大学リーグでチーム初の春秋連覇に導いてMVPを獲得し、2021年ドラフト3位で入団した。昨季は初めて開幕1軍入りを果たしたが、チーム事情もあって1軍生活は3日で終わってしまった。この年、1軍出場は11試合にとどまったが、9月には6試合で先発マスクを被る機会を得た。
しかし、5試合連続してチームは敗戦。しかも、3試合は1-0、3-1、0-3と僅差に近い負け方だったことが、福永の脳裏に焼き付いた。自分が打てなかったことの反省もさることながら、リードを工夫したりできたのではないかという捕手としての未熟さを痛感した。
当時、1軍バッテリーコーチだった齋藤俊雄・1軍戦略コーチからも「大卒で3年目。レギュラーを脅かす存在にならないといけない」と厳しい指摘も受けた。森友哉捕手、若月健矢捕手、石川亮捕手に次ぐ“第4の捕手”から抜け出すため、オフにはデータから配球内容や相手打者の傾向などを調べて整理する一方、課題とされる打撃を磨くため中川圭太外野手に自主トレ同行をお願いした。
4年目の今季、森、石川の故障もあり先発マスクを任される機会も増え、チームの勝利に貢献。ファームで組むことの多かった高島泰都投手だけでなく、宮城大弥投手、曽谷のボールも受けるようになるなど、首脳陣の信頼も得られるようになってきた。
齋藤コーチは「昨年終盤の経験もあり、慣れてきた部分と落ち着きというものが出てきて、先発として送り出せる安心感が出てきました。いい形で成長していると思います」と評価。「(今後は)このピッチャーとも組んでもらおうということが出てくると思います。そういうところでチャンスをつかんでくれればと思います」と期待を込める。
「今年はある程度、試合を作れているという感じはあります。1軍にずっといるからこそ、ミーティングに参加してデータだけではわからないことを感じることができます。コーチや他の捕手の方、スコアラーの方々との意見交換を通して、僕の考えを持ちつつ他の人の考えも参考にしてアプローチできています」と福永。実績のある先輩で盤石なオリックス捕手陣だが、「『じゃあ、福永でいってみようか』と言ってもらえるようにならないといけないと思います」。勝ちに結び付くリードで、地歩を固める。
○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。
(北野正樹 / Masaki Kitano)
