ドラ2寺西に最大の危機「もう終わった」 快投を呼んだ廣岡の“機転”「郡司に似てるな」

オリックス・寺西成騎【写真:小林靖】
オリックス・寺西成騎【写真:小林靖】

プロ初先発の寺西を救った廣岡のジョーク

 起死回生の一言だった。オリックスのドラフト2位・寺西成騎投手が、プロ初登板初先発した15日の日本ハム戦(エスコンフィールド)の立ち上がりで絶体絶命のピンチを迎えたが、廣岡大志内野手のジョークに救われた。

「2者連続の四球。もう、終わったと思いました。でも、廣岡さんがかけてくれた言葉で緊張がほどけて楽になりました。ありがたかったですね」。寺西が廣岡に感謝の気持ちを表したのは17日のことだった。

 2日前の午後、寺西は最大の危機に見舞われていた。敵地で行われた日本ハム戦でプロ初先発を果たしたが、初回から制球が定まらず先頭の浅間大基外野手、2番の郡司裕也捕手を連続四球で歩かせてしまった。

 厚澤和幸投手コーチがベンチを飛び出し、間を取るためにマウンドへ。内野手も集まった。「いける。頑張れ」と厚澤コーチ。若月健矢捕手は「ゾーンに投げてこい」と、ミットをめがけて腕を振れと奮い立たせてくれた。選手が定位置に戻ろうとしたその時、思いもよらない言葉が、寺西の耳に飛び込んできた。

「お前、郡司に似てるな」。声の主は、真面目な表情の三塁手・廣岡だった。「僕には、自分が郡司さんに似ているかどうかは分かりません。でも、あの言葉でスイッチを入れ直すことができました」。冷静さを取り戻した寺西は、清宮幸太郎内野手、フランミル・レイエス外野手、吉田賢吾捕手をカットボールで打ち取りピンチを切り抜けた。

 2回は先頭の万波中正外野手に左前打を許したが、続く石井一成内野手を一直併殺打に仕留めるなど、3回を46球、2安打1奪三振2四球無失点で終える上々のデビュー戦となった。

 機転を利かせた廣岡は、その場面について「なんて言ったかなぁ。いろんなことを言うので、どれがどれだか分からない」と首を傾げたが、寺西の話を伝えると「ああ、言いましたね」と振り返った。

「なんか、めっちゃ(表情が)堅かったんです。真面目な声を掛けてもアレやから、ほぐすのに何がいいかなと考えたんです」と廣岡。郡司の名前を出したことについては「深い意味は何もないんです。その時、ふっと思ったんです。(野球と)関係のないこと言うてやろうと」と真顔で振り返る。

「良い方向にいってよかったです。でも(立ち直ったのは)アイツの実力ですよ」と廣岡。新人右腕に自信を与えることも忘れなかった。

○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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