3球団競合の元西武ドラ1左腕の今 わずか登板5試合で引退…異国に駐在、伴侶との“奇跡”

始球式に登場した立大OBの野口裕美氏【写真:加治屋友輝】
始球式に登場した立大OBの野口裕美氏【写真:加治屋友輝】

立大2年の1980年春に当時の戦後最多記録シーズン96奪三振を樹立

 立大OBで西武にドラフト1位入団した野口裕美氏が25日、東京六大学野球連盟結成100周年記念の「レジェンド始球式」に登場。立大在学時さながらに、ピンストライプに背番号「14」のユニホームでマウンドに上がり、左腕からノーバウンド投球を捕手のミットに届かせた。

 64歳になったが、183センチのすらっとした体形は変わらない。「神宮球場のマウンドは、卒業以来40数年ぶり。身の引き締まる思いでした。ちゃんと届いたので、100点としておきましょう」と胸をなで下ろした。

 現役時代は快速球とブレーキの利いたカーブが持ち味。立大2年だった1980年の春季リーグでは、東京六大学野球における戦後最多記録のシーズン96奪三振を樹立した(その後、2004年春に明大・一場靖弘氏が107奪三振で更新)。在学中の通算317奪三振も歴代11位タイにランクされている。

 1982年のドラフト会議では、西武、中日、阪急の3球団から1位指名を受け、抽選で引き当てた西武に入団。6年間在籍したが、故障などで1軍では通算5試合0勝0敗、防御率5.11に終わった。意外だったのはその後で、半導体関係の会社に就職し、現在はシンガポールに駐在。この日は始球式のために一時帰国したという。

 氏名が同音異字の野口浩美(のぐち・ひろみ)さんと結婚。立大時代の同級生で、応援団チアリーディング部に所属していた女性。浩美さんはこの日もベンチ横で、夫の勇姿を動画に収めながら見つめていた。

 母校の立大は2017年春を最後に16シーズン優勝していないが、この日は東大に勝って勝ち点3でチームの今季全日程を終了し、3位以上が確定した。「木村泰雄監督は僕にとって2学年下の後輩で、一緒に(埼玉県の)志木のグラウンドで練習した仲なので、チームの成績は気にしています。いいチームに仕上がってきているので、『これを毎シーズン継続していくことが優勝への近道だと思う』という話を、選手たちにさせていただきました」と野口氏。

「僕の在学中にできなかった優勝を、木村くんが監督の時に実現してほしいと思います」。後輩の胴上げを、海外から願い続ける。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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