九里&若月バッテリーに浮かぶ“夫婦像” 結成数か月でも…厚澤Cが驚いた対話術

オリックス・九里亜蓮(左)と若月健矢【写真:小林靖】
オリックス・九里亜蓮(左)と若月健矢【写真:小林靖】

厚澤Cが証言「5対5で意見を出し合っているんです」

「誰もあの二人の中に入っていけない、と思うほど阿吽の呼吸でやっています。彼らは30年くらい経った、いい夫婦のようです」。オリックスの厚澤和幸・1軍投手コーチが、九里亜蓮投手と若月健矢捕手のバッテリーを、真珠婚式を迎えた夫婦に例えた。

 九里は今季、海外FA権を行使して広島から移籍。オープン戦では森友哉捕手と組んでいたが、森が右脇腹を痛め戦線離脱した後は若月とのコンビに替わった。

 厚澤コーチが目を見張るのが、二人のコミュニケーションだ。「試合中のグラウンドはもちろんですが、ベンチだけでなく見えないベンチの裏でも話し合っています。呼吸が合っていますから、球数などが許す限り二人に任せています」

 厚澤コーチは、大宮工(埼玉)、国士館から1994年ドラフト2位で日本ハムに入団。現役引退後は、約30年間も指導者として現場に携わってきた。その経験をもってしても、九里-若月のバッテリーは“異次元”だという。

「普通はバッテリー間でコミュニケーションを取るにしても、7対3とか6対4、年齢差によっては1対9というケースもあります。でも、彼らは5対5で意見を出し合っているんです。お互いを尊重しつつね」

 野球のバッテリーは、配球などのサインを出して投球を組み立て、ボールを受ける捕手を「女房役」と呼ぶなど、夫婦に例えられてきた。二人を30年経った夫婦に例えたことを、厚澤コーチは「僕も今年、結婚して30年なんです。もう30年も一緒にいると、お互いのことがわかっていて、空気みたいな存在でけんかにもならないでしょ。互いに尊重しているからこその距離感が、このコンビにはあります。そのくらい、話をしていますよ、この二人は」と説明する。

 九里は「イニングごとにケンヤ(若月)としっかりと話し合っています。いろんなボールを使って引っ張ってくれるので、勉強になる配球がいくつもあります。僕自身、勉強しながらやらせてもらっています」という。4歳下の若月は「イニング間に次に回ってくる打者に対する配球などを話し合いながらやっています。気持ちのこもった投球や練習に対する姿勢など、うちにはなかなかいないピッチャーですので、みんな勉強になっていると思います。若い投手だけでなく、いろいろ教えてもらいながら僕も成長させてもらっています」と明かす。

 より良いものを見出そうと意見を出し合うが、自分の意見を押し付けることはない。「お互いのことを考えて、ぶつけ合わない。ど真ん中なんです」。投手と捕手が交わす言葉から生まれる共同作業を、厚澤コーチはベンチの隅でほほえましく見守っている。

○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。 

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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