自力で覆した「最悪な日」 将来の4番候補、内藤鵬が明かす“5月5日”の真実

オリックス・内藤鵬【写真:小林靖】
オリックス・内藤鵬【写真:小林靖】

オリックス・内藤鵬「最悪だった日を良い日にすることができました」

 悪夢から解放される日がやってきた。オリックス・内藤鵬内野手が、大怪我をして1年を棒に振った日に本塁打を放ち、悪いイメージを払拭した。「最悪だった日を良い日にすることができました」。人懐っこい笑顔で振り返った。

 5月5日のウエスタン・リーグ、中日戦(ナゴヤ)で、内藤はメヒアから左翼ポール際へ今季3号ソロを放った。この日は、内藤にとって忘れることのできない日だった。日本航空石川高から2022年ドラフト2位でオリックスに入団。高校通算53本塁打を放ち、スケールの大きい内野手として1年目の春季キャンプから打撃力をアピールした。

 しかし、「4番・三塁」で出場した5月5日の2軍阪神戦(甲子園)で、走塁中に相手野手と交錯し、左膝を負傷。直後に左膝鏡視下外側半月板縫合手術を受け、実戦復帰したのは10月のみやざきフェニックス・リーグだった。朝起きたホテルの部屋で「こどもの日」に起きた悲劇を思い返したという内藤。「球場で、トレーナーさんに言ったんです。『今日は、僕が怪我をした日なんです。気をつけて見ておいて下さい』って」。

 昨年は春季キャンプ中に、守備で左肩を脱臼して2年連続して大きな手術を受けた。3年目の今季は開幕直後から2軍で「4番」に座り、結果を残している。数字も残して体調もよく、動きも良いだけに、気が付かないうちにオーバーペースになってしまうことがある。トレーナーへのお願いは、自身への戒めの言葉でもあった。

「4番は、僕も打ちたいので、1打席、1打席に責任を持って必死にやっています」

 打撃も順調だ。3試合連続してヒットの出ないことが1度あったが、それ以外は2試合連続で安打がなかったことはない。この日も、1打席目に初球の119キロのナックルカーブを左二塁打。2打席目は2球目のスライダーを左へ運んだ。「1打席目の感覚が良かったので、2打席目も自然な感じで甘い球を打ってやろうと思っていたら、良い角度で上がってくれました」。甘い球を逃さず、一発で仕留める主砲らしい打撃は、新任の福川将和2軍打撃コーチのアドバイスから生まれたという。

 上半身で打つことの多い内藤に、福川コーチはキャンプから下半身は固くして力を秘め、上半身は水のように柔らかく打つように指導してきた。力まず上半身の力を抜いて自然体でボールに向き合えば、当たれば勝手に飛ぶ。意識改革が身に付き始めたことが、本塁打の後の第3打席で証明することができた。

 メヒアの投じた外角高めの直球を、コンパクトに振り抜き中前に運んだ。「いつも本塁打を打った後の打席は力んでしまうから、あの打席が僕にとって大事なんです」と内藤。打撃練習でもセンターを中心に低い打球を打つことを心掛けてきた結果が、実を結びつつある。

「4番は、僕も打ちたいので、1打席、1打席に責任を持って必死にやっています。1打席も無駄にはしたくないんです」。強い自覚が、大砲候補を大きく成長させている。

○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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