首位に0.5差…西武復活の裏に“独特の勘” 指揮官が目論む成長「変えてやろう」

西武・西口文也監督【写真:小池義弘】
西武・西口文也監督【写真:小池義弘】

初回には4球で四球選び、6回には“逆方向”への左前打でチャンスメーク

■西武 6ー0 楽天(28日・ベルーナドーム)

 西武は28日、本拠地ベルーナドームで行われた楽天戦に6-0と快勝し、首位・日本ハムに0.5ゲーム差と肉薄した。昨季球団ワースト記録の91敗を喫し、最下位に沈んだチームとは思えない。就任1年目の西口文也監督の采配が冴えわたっている。

 西口監督はこの日、7年目の強打の捕手・牧野翔矢をプロ入り後初のクリーンアップ(3番・指名打者)に抜擢した。牧野自身「びっくりしました。1軍の舞台でチャンスをいただけて、ありがたいと思いました」と仰天。仁志敏久野手チーフ兼打撃コーチも「正直言って、僕もびっくりしました。監督の発想なので」と明かすサプライズだった。

 牧野は右投げ左打ちの好打者だが、試合前の時点で今季成績は打率.227(22打数5安打)に過ぎなかった。スタメンは5試合(6番3試合、7番2試合)で、指名打者での出場は皆無だった。

 それでも初回から期待に応えた。無死一、二塁の好機で第1打席に入ると、楽天先発の右腕・瀧中瞭太投手に対し、カーブ3球と内角低めのストレートを見極め、4球で四球を選び満塁に。続く4番タイラー・ネビン外野手の先制右犠飛、5番・長谷川信哉外野手の左前適時打へとつなげた。

 3回先頭での第2打席では、カウント3-0から打って出たものの右飛に倒れた。牧野は「あれは怒られました」と苦笑。真ん中低めに甘く来た141キロのストレートだったが、爪痕を残そうと力んだか……。

 6回には先頭で、瀧中の外角ストレートを逆らわず“逆方向”の左前へ運び、再びチャンスメーク。この一打がネビンの中前打、長谷川の2点三塁打の呼び水となった。牧野が「四球とヒットが出てよかったです」と思わず胸をなでおろしたのも無理はなかった。

ドラフト2位ルーキー渡部聖が左足首を捻挫し欠場中

 西口監督は「先週、瀧中くんにやられた(20日の同カードで6回2安打1失点)ので、打線を組み替えました。フレッシュな人たちが、しっかり仕事をしてくれました」。ただ、3番に牧野を抜擢した理由については多くを語らず「“変えてやろう”という気持ちです。誰を3番に当てはめるかと考えた時に、牧野がいいかなと。それだけです」とだけ答えた。

 西武ではドラフト2位ルーキーの渡部聖弥外野手が3番に定着し猛打を振るっていたが、23日のロッテ戦で一塁への帰塁の際に左足首を捻挫し、この日も欠場した。出場選手登録抹消はせず、早期回復を待っている状況だ。

 そんな中、相手先発の瀧中は試合前の時点で今季、左打者には被打率.302(43打数13安打)と打ち込まれ、右打者は同.183(60打数11安打)と抑えていた。それだけに次善の策として、1番・西川愛也外野手から2番・平沼翔太外野手、3番・牧野と左打者を3人並べたい意向はあっただろう。

 牧野は2018年ドラフト5位で、石川・遊学館高から西武入り。4年目の2022年に1軍デビューを果たすも、6月に右肘のトミー・ジョン手術を受け、同年オフには育成選手となった。昨年1月には帰省中、能登半島地震に被災。土砂崩れや倒木のために、運転中の自家用車の中に約7時間閉じ込められた。それでも2軍で結果を残し、6月には支配下登録復帰を勝ち取った苦労人だ。

 昨季は当時ファーム監督を務めていた西口監督の下、イースタン・リーグで36試合に出場し、打率.259(116打数30安打)をマーク。指揮官にはいいイメージが残っていたのかもしれない。いずれにせよ、投手出身で現役時代に通算182勝を挙げた西口監督は、“本職外”だった打線の組み替えでも独特の勘が働くようだ。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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