廣岡大志「誤解を招いては困る」 明かす甲子園の真実…相手思い「心配です」

オリックス・廣岡…誹謗中傷よりも「今は脇腹の痛みと闘っています」
6日の阪神戦(甲子園)で、二塁への走塁を巡り守備妨害として「警告」を受けたオリックスの廣岡大志内野手が、敵将のコメントに感謝の気持ちを表した。「知りませんでした。そう気遣っていただいているのはありがたいですね」。阪神・藤川球児監督のコメントを伝え聞いた廣岡が顔を上げた。
廣岡が「警告」を受けたのは6月6日の交流戦、阪神戦(甲子園)だった。0-0の9回の一塁走者として、二ゴロで二塁に滑り込んだ際、阪神・小幡竜平内野手と交錯したプレーを守備妨害と判定された。
試合後、報道陣の求めに応じて会見した廣岡は「変な誤解を招いては困るので」と自ら切り出し「自分の前のゴロで土のグラウンド。何が起こるかわからないのが、まず技術的なところで、もし(野手が)弾いた場合にはすぐに三塁に行けるよう、僕も目視してセカンドを見た時に少し膨らんでしまったのはあるんですが。僕も実際に二遊間をやっていて、選手にいくのはダメというのはわかっているんで、そういう気持ちは一切ないです。膨らんでいると思ってすぐベースに滑りにいったんですが、映像を見てもらったらわかると思うんですが小幡選手もギリギリにそこにいて、そこにいったように見えるんですが全然、故意にやったとかは。こっちも技術的には何かあったら三塁へいくという気持ちで走っていましたし、実際、多少膨らんでいましたけど最終的にはベースの方にいっているのが事実で。その前に交錯してしまったんで、映像では足にいったように見えるかもしれないんですけど、実際、そういう気持ちは一切ないですし。そんなんしたらダメというのは僕も二遊間をやってたんでわかりますし」と一気に状況を説明した。
塁上のプレーで右脇腹を痛めた廣岡は会見の最後、直前のプレーで自分の打球が頭部に当たり担架で退場した石井大智投手の身を案じて「(自分のことより)石井投手の頭の方が僕は心配です」と締めた。
廣岡にとっては悪意のないプレーだった。それでもSNS上では廣岡に対する誹謗中傷が相次ぎ、実家の精肉店にまで及んだ。「(誹謗中傷より)今は脇腹の痛みと闘っています」と話した廣岡の表情が一瞬、変わったのが該当プレーに対する阪神の藤川監督のコメントを伝え聞いた時だった。
藤川監督は、廣岡が報道陣に状況を説明していた同じ時間にこのプレーに言及していた。「もしかしたら、避けようとしてそういうスライディングになったような気がしています。グラウンド上は100%と100%でぶつかるので。いろんなことが起こり得る。廣岡選手も気持ちは辛いものがあると思いますから。あした元気に彼もプレーしてもらえたらいいんじゃないか」などという内容だったが、廣岡はその発言を知らなかったという。このプレーに関する情報を避けていたのではなく、「(普段から)SNSをあまりやらないんで」とのことだった。
頭部直撃を目撃…打球を見れず「普通に二塁には行けないと思いました」
廣岡に聞いてみたいことがあった。自身の打席で打球が石井の頭部を直撃しボールが三塁側に転がった時、インプレー中にもかかわらず一塁にとどまった理由だった。「いろんな人に聞かれるんですが、逆に(二塁に)行けますか? 打球がどこに行ったのかもあまり見えなかったですし、倒れているのを見ると……」と顔を歪めた。フェアプレーの精神かとの問いには「それは関係ないです。当たったから二塁に行かなかったというように言ってほしいかもしれないですけど、普通に二塁には行けないと思いました」と明かす。
一連のプレーを一塁コーチャーとして見ていた安達了一・内野守備走塁コーチは「(インプレーなので)行こうとしたと思いますが、石井投手を心配していたんで遅くなってしまったというのはありますね。(フェアプレーの精神は)あったと思います」と二塁を奪わなかった廣岡の心情を思いやった。
また、警告を受けた走塁には「今の時代、そんなことをするわけがありません。余裕でファーストはセーフなんですし。大志も一生懸命、次の塁を狙うためにちょっと膨らんでしまったというのがあるんで、それで(二塁ベースに)スライディングをしたという感じでした」と説明した。結果として危険なプレーと判断されたこともあり、オリックスは翌日の試合前に、水本勝己ヘッドコーチと松井佑介外野守備走塁コーチ、安達コーチが阪神側に謝罪した。
廣岡はその後も懸命のプレーを続け、6月12日のDeNA戦(京セラドーム)でヒーローインタビューを受けた翌日に「右肋骨骨折」で出場選手登録を抹消された。常に全力プレーに徹し、タイミング的に間に合わないサヨナラの打球を「何が起こるかわからない」と本塁へ返球するなど、決して手を抜くことがない選手。満塁本塁打を放った試合では真っ黒になったユニホームでお立ち台に上がったこともある。生真面目な性格で、野球にストイックに取り組む廣岡を知る人で、走塁をラフプレーと見る人はいない。
プロ10年目で、ようやく掴みかけたレギュラーの座。復帰に向け17日から、グラウンドで軽いランニングも始めた。「泥臭いプレー」を信条とする廣岡の懸命なプレーが早く見たい。
〇北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者一期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。
(北野正樹 / Masaki Kitano)
