西武に“生まれた”名手が狙う初受賞 駆け抜ける金の卵の信条「捕れるものは捕りたい」

連日、西川愛也の好守が光る
■西武 2ー1 DeNA(19日・横浜)
西武の「1番・中堅」に定着した西川愛也(まなや)外野手が、連日の“ザ・キャッチ”で球場を大いに沸かせている。
19日に敵地・横浜スタジアムで行われたDeNA戦。両チーム無得点で迎えた5回、西武先発の渡邉勇太朗投手はそれまで、相手のエース左腕・東克樹投手と一歩も譲らぬ投げ合いを演じていたが、2死一、二塁のピンチで桑原将志外野手に会心の当たりを放たれた。
打球はバックスクリーン方向へぐんぐんと伸びる。真っすぐ背走していた西川は、フェンス際まで来て急に右翼方向へ進路を変えた。しかし行き過ぎたのか、最後は左翼方向へ懸命にグラブを伸ばして捕球。そのままフェンスの方向へ倒れ込んだ。
試合は最終的に2-1で西武が勝ったが、この飛球を捕れていなければ、DeNAに先制の2点が入っていたはず。展開はどう変わっていたかわからない。渡邉は思わず両手を挙げて大喜びし、打った桑原は無念そうに天を仰いだ。
西川は「あの打球に対しては最初、正面に入り過ぎてしまいました。打球に対して正面に入り過ぎてしまうと、捕るのがムズイ(難しい)んですよ。スコアボードの旗を見ると、風も右翼方向に吹いていたので、もっと右翼方向へ流されるという読みもあって右翼方向へ進路を変えましたが、思ったほどでなくて、最後は少し慌てました」と自ら解説。普段プレーすることのないセ・リーグ球団の本拠地球場の特性にも、何とか対応した。「ピッチャー(渡邉)が頑張って投げてくれていたので、捕れるものは捕りたいと思っていました」とうなずいた。
一方、ヒットを1本損した形になった桑原は、自身も中堅手としてゴールデン・グラブ賞を2回獲得している名手。「僕は普段、西川くんのプレーを見ていないので、彼のプレーについて詳しくはわかりませんが、ピッチャーのために捕ってあげようという強い気持ちを感じました。相手にああいう守備をされると、試合の流れがこちらに来ない。試合の流れをつかむには、まず守備から。改めて勉強させてもらいました」と相手を称えた。
西川は前日(18日)も5回2死二塁のピンチで、山本祐大捕手が左中間へ放った痛烈なライナーをダイビングキャッチ。最後は人工芝に胸を痛打し、「(体が)しんどいです」と苦笑していた。12日にも本拠地ベルーナドームで行われた阪神戦で、2回先頭の大山悠輔内野手が放った大飛球を背走し、後ろ向きのまま捕球すると、フェンスに激突。それでもボールを放さなかった。
右翼に長谷川、左翼に怪我で離脱中の渡部聖、ユーティリティも充実
熊代聖人外野守備走塁コーチは「マナヤ(西川)は凄いです。打球に対する反応が速いですし、球際に強い。練習でも『これは追いつけないな』と思った打球に対し、最後の最後に体が伸びていく感じです」と称賛した。
今季に入ってからの成長も感じているそうで「打つ時には打つこと、守る時には守ること、塁に出たら走ることに集中している。例えば、チャンスで打てずに悔しい思いをした直後であっても、守備に就いてから引きずっているようなことはなくなりました」と指摘した。西川自身はこれに「普段から熊代さんに言い聞かされていることですから」と笑った。
打つ方でも、シーズンはまだ半分以上残っているが、西川は昨季マークした自己最多の年間71安打に並んだ(19日現在、以下同)。これは今季のパ・リーグでは、72安打のオリックス・西川龍馬外野手に次ぐ2位。走っても、楽天・小深田大翔内野手の19盗塁に次ぐ2位の14盗塁を量産している。その中でも守備は特筆もの。昨季までは出場機会が少なかったが、レギュラー1年目の今季はゴールデン・グラブ賞の有力候補と言っていいだろう。西川自身「獲りたい気持ちはあります」と率直だ。
熊代コーチは「ウチの外野陣は、右翼のハセ(長谷川信哉外野手)も、まだまだ勉強すべきことも多いとはいえ、守備範囲が広い。怪我で戦列を離れているセイヤ(ドラフト2位・渡部聖弥外野手)も守備がいい。(ユーティリティプレーヤーの)ケイスケ(仲田慶介内野手)も平沼(翔太外野手)も、いい守備を見せてくれています」と指折り数え、「みんなが『日本一の外野陣は西武、と言われるようになって見せる』と口にしてくれているんですよ」と頼もしげに微笑む。
昨季球団ワースト記録の91敗を喫し最下位に沈んだ西武が、一変して優勝争いを展開することができている要因の1つだ。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)
