泥沼7連敗で阪神が失った“戦力” 多い悩みの種も…専門家が指摘した逆襲へのキーマン

先発投手陣では上昇モードの左腕伊藤将に期待
阪神は今季のセ・パ交流戦を、7連敗を含む8勝10敗(12球団中8位タイ)で終えた。それでもセ・リーグ球団で阪神より好成績を挙げたのは、9勝9敗の広島だけ。7連敗を喫しても阪神のリーグ首位は揺るがず、27日に敵地・神宮で行われるヤクルト戦からリーグ戦を再開する。現役時代に日本ハム、阪神など4球団で捕手として21年間活躍した野球評論家・野口寿浩氏が、V奪回のキーポイントを指摘する。
交流戦期間中、阪神にとって衝撃が入ったのは、右の中継ぎとして24試合に登板して、3セーブ17ホールド、防御率0.36と大活躍していた石井大智投手の戦線離脱だ。6日のオリックス戦でライナーが頭部を直撃し救急搬送された。「脳震とう特例措置」で出場選手登録を抹消されている。
湯浅京己投手も15日・楽天戦の延長12回にサヨナラ打を浴びた翌日(16日)に出場選手登録を抹消されたとあって、野口氏は「ここにきて右の中継ぎに苦労している。今後の浮沈に関わるポイントでしょう」と見る。
ウィークポイントを解消できそうな人材も、いないわけではない。野口氏は「来日1年目のネルソンに格好がつき始めました。(ドラフト3位の)木下も、22日のソフトバンク戦の投球を見る限り、非常に楽しみです」と名前を挙げる。
ネルソンはオープン戦で故障し開幕1軍を逃したが、5月15日に1軍昇格すると、10試合0勝1敗4ホールド、防御率0.90の好成績を挙げている。一方の木下は3試合で防御率3.00。前述のソフトバンク戦では自己最速を更新する157キロのストレートがうなりを上げ、1イニングを2奪三振で3者凡退に抑えた。
ホープ前川が復帰「開幕当初のサード佐藤輝に戻すのかどうか」
「先発投手陣では、伊藤将司がキーマン」と野口氏は言い切る。今季出遅れた5年目左腕は、今月11日の西武戦で初先発し7回2/3を無失点。同18日のロッテ戦では6回1失点の好投で今季初勝利を挙げ、上昇気流に乗った。
「森下の調子の下降とともに、打線全体の得点力が落ちていることも気になります」。3番を打つ森下は3、4月に打率.317の打棒を振るったが、5月の月間打率は.235、6月に入ってからは.205と低迷。リーグ3位の打率.306をマークしている中野拓夢内野手が、22日のソフトバンク戦で頭部に150キロの速球をぶつけられ、そのまま交代したのも新たな心配の種である。
そんな中、打撃不振で2軍落ちしていた22歳のホープ・前川右京外野手が今月17日に1軍再昇格を果たした。前川の2軍降格後、佐藤輝明内野手がサードからライト、森下がライトからレフトへ配置転換され、スタメン三塁をラモン・ヘルナンデス内野手、糸原健斗内野手らで埋めてきた経緯がある。「リーグ戦再開を機に、開幕当初のように6番・レフト前川、サード佐藤輝の形に戻すのかどうか。藤川(球児)監督の判断が注目されるところです」と野口氏は指摘する。
リーグ戦再開を前に、セ・リーグは阪神が首位、DeNAと広島が3.5ゲーム差の2位に並んでいる。首位に4ゲーム差の4位の巨人は、雨天中止となった交流戦1試合(ロッテ戦)を24日に残している。「阪神は交流戦で負け越しても首位のままリーグ戦再開を迎えることができますが、一方、セ・リーグの他球団も『俺たち、交流戦であんなに負けたのに、首位にそれほど離されていないぞ』という前向きな心境でしょう。優勝争いの行方はまだまだわかりません」と野口氏は見る。気温の上昇とともに、優勝争いから抜け出すチームは現れるのか。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)