オリックスの“裏のMVP”は大城滉二? コーチも唸った職人技…32歳が静かに輝く理由

目立たないプレーでも勝利に貢献
オリックスの大城滉二内野手が、走攻守にベテランの味を発揮し、チームの勝利に貢献している。
「しんどいですけど、野球をやってるな、っていう感じです。昨年はやってませんから」。大城が充実感を漂わせた。
大城は興南高(沖縄)、立教大から2015年ドラフト3位で入団。興南高2年の甲子園で春夏連覇を経験し、立教大ではチームの歴代最多安打をマークする活躍をみせ、オリックスでは内野すべてを守れるユーティリティープレーヤーとして存在感を示してきた。
しかし、2021年に右ひざ前十字靭帯を損傷してから出番が減り、2024年は開幕直前に右肩甲下筋の筋損傷で出遅れ。7月に復帰した試合で足の張りを訴えて1軍登録を抹消され、7試合出場にとどまってしまった。
10年目の今季も、太田椋内野手、紅林弘太郎内野手、廣岡大志内野手らの活躍で出番は限られていたが、内野手に故障者が相次ぎ6月4日の広島戦(京セラドーム)からスタメン起用が増えた。
6月14日の巨人戦(同)では、延長11回1死満塁で四球を選んでサヨナラ勝ちにつなげるなど、安定した守備など目立たないプレーでもチームの勝利に貢献している。
「ああいうプレーをしてくれる選手がいると、チームは本当に助かりますよ」。安達了一・内野守備走塁コーチをうならせたのは、6月12日のDeNA戦(同)。3-2の6回、1死走者なしからのセーフティーバント。カウント1-1からの3球目を三塁線に転がした。トレバー・バウアー投手が捕球しても送球できない意表を突くプレーだった。走塁でも、2死からジョーダン・ディアス内野手の三ゴロを三塁手が弾く間に二塁から本塁を陥れ、貴重な追加点を奪った。
「好投手なんで、なかなかゲームが動かないので、なにかやった方がいいという判断でした」と静かに振り返った大城。走塁については「(三塁コーチャーの)松井(佑介・外野守備走塁)コーチが腕を回していたので、それに従っただけ」と当然といった表情だった。
6月10日の同じカードでは、1-0の6回1死から一塁走者として、打球に対する好判断をみせた。紅林の左への大打球で、大城は二塁ベースを大きく回り、打球が筒香嘉智外野手のグラブをかすめフェンスを直撃すると、2点目のホームを踏んだ。「ああいうところの打球判断は、やはり長年の経験としっかりとした準備ができている結果だと思います。筒香の肩とか、ぎりぎりのところを攻めないと好走塁にはつながりません」と松井コーチ。
紅林の打球は、捕球されれば1塁に戻るのが難しいタイミングにもみえたが、大城は「フェン直のイメージで、捕られても(一塁に)戻れるくらいの位置にいたと思うんです、自分の中では。(筒香が)捕球してもあの体勢からの返球は難しいですから」。ベテランらしい判断との評価には「みんな同じことをすると思いますよ」といってのけた。
「大城もフルで出ているのでしんどいと思うんで、パワーゲージを見ながらやっています」と、コンディションとチーム状況に応じた起用を明かした岸田護監督。スーパーサブの存在が、V奪還を目指すチームの大きな武器になっている。
〇北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者一期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。
(北野正樹 / Masaki Kitano)