阪神に必要だった「捕手の判断」 防げた7連敗…元MVP指摘、首脳陣に「意見していい」

中日などで活躍した中尾孝義氏「一番間近で見ているのはキャッチャー」
プロ野球は27日からリーグ戦が再開。就任1年目の藤川球児監督が率いる阪神は、セ・パ交流戦で8勝10敗と負け越したものの、セ・リーグ首位に立つ。中日でMVPに輝くなど巨人、西武と3球団で名捕手として活躍した野球評論家・中尾孝義氏が交流戦の戦いぶりを振り返り今後を展望する。
阪神は交流戦18試合のチーム防御率が1.99と12球団トップだった。それでも期間中に7連敗を喫し、そのうち6度が逆転負け。中尾氏は「石井がいなくなってしまった事で、悪い流れが続きましたね」。リリーフでフル回転してきた石井大智投手が6日のオリックス戦(甲子園)で、打球が頭部を直撃するアクシデントで離脱した影響を指摘した。
中尾氏は捕手の視点から「それでも、あそこまでの連敗は防げたかも……と思うんですよね」と語る。
14日の楽天戦(楽天モバイルパーク)。2点リードの7回、3番手の桐敷拓馬投手が、打者5人に対して3安打を浴びるなど1死も奪えず、あっという間に同点に追いつかれて降板した。最終的に阪神は7投手のリレーも実らず、延長10回の末に4-5でサヨナラ負けを喫した。
「桐敷はストライクゾーンに入ってくるボールがめちゃくちゃ甘かった。本当に甘い球ばっかり。投げ方も良くなかった。受けていた坂本(誠志郎)も、そう感じていたと考えます。ピッチャーの替え時は難しい。もちろん監督ら首脳陣の作戦が優先なんですが、一番間近で見ているのはキャッチャー。『きょうは厳しい』『替えて欲しい』という時はあります。意見してもいいし、捕手の判断もあった方がいい、そう思います」
桐敷は昨年の最優秀中継ぎ。10日の西武戦(ベルーナドーム)で4失点し、逆転された屈辱を晴らすマウンドでもあった。プロの投手は誰しもプライドが高いだろう。「捕手がわざわざタイムを取ってというのは、まずできません。僕はピッチャーの状態をうまく伝えられるようにベンチとサインを作ってました」。中尾氏は中日時代に近藤貞雄監督と権藤博投手コーチと示し合わせていた。
阪神スカウト時代に獲得の岩崎は「球持ちは悪くはないが、頭が突っ込みすぎ」
阪神の捕手陣は坂本、梅野隆太郎とベテランの域。藤川監督もリリーフで実績を残してきた。より細心の注意を払うことで、看板の投手力を活かせる。
一方、継投の最後を締める岩崎優投手の状態はどうなのか。実は中尾氏が阪神スカウト時代に担当して獲得に至った左腕。“球界の父親”として常に注目している。11日の西武戦では2点リードの9回1死満塁で登板も、つかまってサヨナラ負けに「あの時は調子が悪かったですね。頭が突っ込みすぎて肩の回転がなかった。球持ちは悪くはなかったが、体の軸が全然なくなってきているから制球が甘くなってました」。
8年連続40試合以上の登板で迎えたプロ12年目34歳の今季は、交流戦終了時点で27試合0勝2敗14セーブ、防御率2.08。「筋力とか衰えてきたりはしますが、投げ方は良くできる」。コンスタントに投げ続けてきた経験で培った修正能力を信頼している。
交流戦は他のセ・リーグ5球団も全て勝率5割以下に終わった。阪神は首位の座から陥落することなく、むしろ2位チームとのゲーム差は交流戦前の2.5から3.5に広がった。中尾氏は「このままいくかどうか分からないが、今のピッチャー陣なら戦い方の計算はできます」と見ている。
(西村大輔 / Taisuke Nishimura)