ドラ1・麦谷祐介が“封印宣言”「選手生命にかかわる」 負傷離脱で見つめ直した現在地

復帰時期は延びるも「レベルアップする時間にしたい」
「ヘッスラ(ヘッドスライディング)はもうやりません。選手生命にかかわることですから。でも、やろうと思ってやるプレーではないので、無意識にやってしまうかも……」。オリックスのドラフト1位、麦谷祐介外野手が怪我による離脱につながったヘッドスライディングの封印を宣言しつつ、懸命なプレーの継続を誓った。
8日の交流戦、阪神戦(甲子園)での出来事だった。「1番・中堅」で出場し、第1打席に遊ゴロで一塁ベースに手から飛び込み、内野安打にした。「ベースで突き指をした感じで。(痛みで)やった、と思いました」という麦谷だが、7回の守りでは中堅前への打球にスライディングキャッチを試みるなど、試合終了までプレーを続けた。
「やるしかない、やるだけだと思いました。アドレナリンが出たから、バットも振れました」。痛みに耐えた理由もあった。開幕1軍入りを果たし、このまま1軍でシーズンを完走する最低限の目標を実現するためだった。
10日のDeNA戦(京セラドーム)では、全体練習前にベンチ前でキャッチボールをする姿があったが、その日に選手登録を抹消された。病院での検査で「左手第4指中節骨基部剥離骨折」と診断されたが、キャッチボールを行った理由はプレーができるところをアピールしたかったからだという。「行きます、と言ったんですが監督さんや首脳陣の方々が『次に何かあったらいけないから、やめておこう』と。ずっと1軍にいたかったので、ファイティングポーズを取ったのですが」と悔しがった。
戦列を離れるまでの1軍成績は41試合で70打数18安打、5打点、8盗塁。打率.257に「ダメですね。もっと打ちたいです」と顔を歪めた。反省も多い。「ヒットの数だけでなく、チームの勝ちに貢献できるプレーはもっとできたんじゃないかと思っています。振り返ると、簡単に三振をした場面もありました」。
野球人生で初めての骨折にも「試合ばかりでちゃんとできていなかったウエートトレーニングもしっかりやっていますし、打撃を見つめ直すいい時間にしたいと思っています」と麦谷は前を向く。
21日から外野ノックも受け、カーブマシンでの打撃練習も始めた。打撃練習ではまだ痛みが出るといい、当初「2週間で戻ります」と意気込んだ復帰時期は延びて、実戦復帰はまだ少し先になりそうだ。
「こういう(リハビリの)時間って大事だなと思っています。のんびりと怪我を治すんじゃなくて、レベルアップする時間にしたい」。走攻守でチームに刺激を与えるガッツ溢れる男が、静かに闘志を燃やしている。
○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者一期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。
(北野正樹 / Masaki Kitano)
