11歳の少年、始球式から始まった夢 京セラで球宴初出場の太田椋「想像もしてなかった」

中村剛也からサインボールもらった思い出
オリックスの太田椋内野手が、初出場となる「マイナビオールスターゲーム2025」に、特別な思いで臨む。
「想像もしていませんでしたね、その時は。大人になって、まさか京セラドームでオールスターに出られるとは」。太田が感慨深げに振り返った。
13年前の2012年7月20日、太田はオリックスの本拠地で開催されたオールスター第1戦の試合前、始球式のためマウンドに立っていた。3万3335人の大観衆に見守られ、打者全セの長野久義外野手(巨人)へ投じたボールは、ショートバウンドで全パの鶴岡慎也捕手のミットに。
「広いなぁ」が京セラドームの印象。試合では、中村紀洋内野手(DeNA)が斎藤佑樹投手(日本ハム)から逆転2ランを放ち、MVPに輝いた場面が印象に残っているという。
始球式は、オリックスで打撃投手を務めている父の暁さんからの「投げてみる?」という一言で決まったという。「いきさつはわかりませんが、プロ野球への憧れがより強くなった出来事でした」と振り返る。投げたボールには、この年、4度目の最多本塁打のタイトルを獲得した中村剛也内野手(西武)にサインをしてもらった。「オリックスの選手はいつでももらえますから」というのが理由だが、長打力への憧れがあったのだろう。ボールは、もらったオールスター仕様のカラフルなグローブとともに実家のリビングに飾られているそうだ。
2024年のオールスターは代替選手として初出場が決まりながら、開催直前に右足を痛め辞退。ホームで行われるゲームに、ファン投票で初出場を決めた。交流戦明けにいためた腰痛も治り、万全な体調で迎えることができた。
「結果も大事ですが、場の雰囲気も楽しみたい。ホームランは打ちに行きます、ポイントを前にして(笑)」。日本シリーズで先頭打者初球本塁打を放つなど、大舞台には強い。「子どもたちに夢を持ってもらえるのが、僕自身、一番うれしい」。球界への恩返しとともに、13年前の中村紀のようにバットで野球の楽しさを伝える。
〇北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者一期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。
(北野正樹 / Masaki Kitano)