オリ宇田川優希が目指す“史上最速男” TJ手術を経て見据える「強く新しい自分」

オリックス・宇田川優希【写真:本人提供】
オリックス・宇田川優希【写真:本人提供】

復活を期す宇田川が目指すチャップマンの“存在感”

 トミー・ジョン手術(TJ)からの復帰を目指しリハビリ中のオリックス・宇田川優希投手が、MLB史上最速105.8マイル(約170.3キロ)を誇るアロルディス・チャップマン投手(レッドソックス)が秘める存在感を目指している。

「三振を取った後、仁王立ちして打者を圧倒する姿を見て、カッコいいと思ったんです。それってピッチャーにとってすごく大事なことだと思うので。そういった威圧感、マウンドでの存在感に憧れています」。TJ手術からちょうど4か月目にキャッチボールを始めた宇田川が声を弾ませた。

 宇田川は、仙台大から2020年育成ドラフト3位で入団。2年目の7月に支配下登録されると剛球と鋭いフォークを武器に中継ぎ、抑えとして19試合に登板し、2勝1敗3ホールド、防御率0.81で逆転優勝に貢献。日本シリーズでも活躍し、2023年春にはワールド・ベースボール・クラシック(WBC)にも選出された。

 しかし、2024年は右肩の故障や緊急登板で右ひじを痛め13試合出場にとどまり、2025年4月にTJ手術を受け現在、リハビリに励んでいる。

 チャップマンへの憧れは2024年から。「去年は『よし、やってやるぞ』とマウンドに上がったんですが、スピードボールも投げられませんでしたし、フォークも全然ダメで。気持ち的にも弱気になって、マウンドで情けない思いを持っていたんです。そんな時にチャップマンの動画を見て、こういうピッチャーにならなきゃいけないんだと思ったんです」と語る。

「自分がいくら威圧感を出そうと思っても、相手に伝わらなければ意味がありません。チャップマンは、画面を通してもそれが伝わってくるんです。打者は怖さがあると思います。もちろんスピードボールがあれば、より威圧感は増すと思いますが、マウンドでの表情や佇まいが僕にはまだまだ足りません」と宇田川は現状を見つめる。

チャップマンから送られたサインボール【写真:本人提供】
チャップマンから送られたサインボール【写真:本人提供】

チャップマンから届いたサインボール

 リハビリ中の宇田川を奮い立たせるものがある。チャップマンのサインボールだ。昨季から山崎颯一郎投手とともに、チャップマンの体幹トレーニングを参考にしているが、アンドレス・マチャド投手がチャップマンと自主トレをしていると聞き、サインを依頼。今春のキャンプで、「YUKI UDAGAWA」とチャップマンがサインしている動画とともにボールを受け取った。

 サインボールは、尊敬するダルビッシュ有投手、大谷翔平投手のものと並べて、自宅リビングのショーケースに大事に保管している。「(チャップマンは)理想とするピッチャーです。出てきたら終わりだ、というくらいの存在感、威圧感を身につけるためにもスピードボールを投げたいと思っています」。

 プロ入り後初めて、シーズンを通し戦列を離れることになった“現状”を、新たな自分をつくる期間と捉えている。「1年間も投げられないってことは、めったにないこと。大きく体をつくり変えるのは今しかありません。地道なウエートトレーニングを続けて体を強く大きくして、精神的にも強く新しい自分をつくりたいと思っています」。来春のキャンプ、オープン戦では打者を圧倒する球速、球威で勝負できるよう鍛錬を重ねていく。

○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者一期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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