異国で苦戦した食生活「ナゲットとポテトしか」 初の世界一…前田悠伍が語った侍J

ソフトバンク・前田悠伍【写真:矢口亨】
ソフトバンク・前田悠伍【写真:矢口亨】

鷹・前田悠伍はU18W杯で日本勢初の世界一に貢献

 9月5〜14日の期間、沖縄を舞台に「ラグザス presents 第32回 WBSC U-18 野球ワールドカップ」(以下、U-18W杯)が開催される。1981年から始まり、今年で32回目を数える歴史ある大会。Full-Countでは、2015年の大阪以来2度目となる日本開催を盛り上げるべく、かつて同大会に出場したNPB選手たちに“あの夏”の記憶を呼び覚ましてもらった。

 第3回には2023年の第30回大会で野球日本代表「侍ジャパン」を世代初の世界一に導いたソフトバンク・前田悠伍投手が登場する。自身は3試合に登板し、3勝0敗、防御率0.54をマーク。決勝ではチャイニーズ・タイペイ相手に1失点完投勝利を挙げた。

 名門・大阪桐蔭で1年秋からベンチ入りし、明治神宮野球大会、選抜で優勝に貢献。2年時の明治神宮大会では背番号「1」を背負い、史上初の連覇を達成した。2年時から“BIG4”と呼ばれ注目を浴びていたが、最後の夏は決勝で履正社に敗れ、甲子園出場はならなかった。

 そんな中選ばれたU-18。最初に感じたのは“チーム力”だった。「全員が集まった時から仲が良くて、めっちゃチーム力が良かったです。沢山ホームランを打つバッターとかはいなかったんですけど。もしかしたら勝てるんじゃないかなと思って、本当に勝てたので」と振り返った。

 異国での開催は、慣れない環境やトラブルに苦戦することがある。前田も「夕食はナゲットとポテトしか食べていなかったと思います(笑)。サラダとかも食べて、最低限の栄養は摂っていました」。食生活には苦労したようだった。

決勝はアウェーの環境も「絶対勝てる」

 試合では侍ジャパンのエースとして君臨。オープニングラウンドでは米国相手に5回2/3を無失点。スーパーラウンドでは韓国相手に4回を無失点。いずれも、優勝経験のある強豪に躍動した。「予選のアメリカと韓国は投げるからっていうのは言われてて、決勝も行けたら先発っていうのは言われてたんで、準備はできてました」。

 台湾・台北市で行われた同大会。決勝はチャイニーズ・タイペイとの対戦だった。地元の大歓声の中、先制を許したが、チームに落胆ムードはなかった。

「誰ひとり『やばい、負ける』っていう気持ちになっていなかったので。『絶対勝てる』という、スタッフの人も含めて全員がそんな感じだった。それが一番強かったというか、相手より勝っていたので勝つことができたのかなと思います」

 4回にスクイズと相手のエラーで2点を奪い逆転に成功すると、1点のリードを最後まで前田が守り切った。優勝の瞬間は今でも忘れない。「みんなで『初(優勝)なんやろ?』みたいな話をして。『ずっとこれから残ってくんやな』っていう話で盛り上がっていたのは覚えています」と懐かしそうに振り返る。

 あれから2年の月日が経った。前田はソフトバンクからドラフト1位指名を受け、2年目の今季は7月13日の楽天戦(楽天モバイルパーク)で初勝利を挙げるなど、着実にプロとして成長の歩みを止めていない。

「甲子園優勝ももちろん嬉しいですけど、それとは違う喜びでした。僕はより嬉しくて、色々な国の人と戦って優勝して、そこで他のチームから学ぶこともめっちゃありました。あとは外国人選手との交流もできるので、そういうところで野球ももちろん学ぶことが野球以外でも交流できます」

 今年のU-18W杯は沖縄が舞台。2015年以来2度目となる日本開催となる。連覇に挑む後輩たちの活躍を、前田も心から楽しみにしている。

(川村虎大 / Kodai Kawamura)

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