TJ手術で今季絶望も…オリ前佑囲斗が目指す“進化” 追う先輩右腕の背中「できることを」

オリックス・前佑囲斗【写真:小林靖】
オリックス・前佑囲斗【写真:小林靖】

6年目の前が黙々と励むリハビリ「慌てても同じこと」

 今年5月、トミー・ジョン手術(TJ)を受けた、6年目の育成右腕・前佑囲斗投手が復帰への道を歩んでいる。「今は治すことと、成長につながるようなトレーニングをしています。来年どうこうじゃなくて、来年があると信じてやるしかないですね」。TJ手術から約3か月、24回目の誕生日を迎えた8月13日に前が静かに口を開いた。

 前は、津田学園(三重)から2019年ドラフト4位でオリックスに入団。高校3年に春夏連続して甲子園に出場し、春は初戦の龍谷大平安(京都)戦で延長11回、170球の熱投も報われず敗退したが、9回まで1安打無失点に抑えた。夏は静岡高戦で11三振を奪い、佐々木朗希投手(大船渡高、現ドジャース)、宮城大弥投手(興南高、現オリックス)、奥川恭伸投手(星稜高、現ヤクルト)らとともに、U-18の日本代表にも選ばれた。

 オリックスでは、山本由伸投手(ドジャース)が入団時に着けていた背番号「43」を受け継ぎ、4年目に1軍デビューを果たした。昨年オフに戦力外通告を受け育成選手として再出発したが、今年4月29日のくふうハヤテ戦(佐藤製薬スタジアム)で右肘を痛めて降板し、5月20日にTJ手術を受けた。

「投げた瞬間、音が鳴ってヤバいと思って自分から交代をお願いしました。翌日にはパンパンに腫れて」と当時を振り返る。支配下再登録を目指して臨んだ育成1年目のアクシデントだったが、「自分は、まだまだ若いんで」と手術に躊躇することはなかったという。

「復帰までどれくらいの時間がかかるのか、最初から分かっていました。自分がどれだけ慌てても同じこと。慌てた方が逆効果になると思うので。できることを、段階を踏んでやっていけたらいいなと思っています」と冷静に話す。

 支えになるものもある。チームの先輩、山崎颯一郎投手の存在だ。山崎も2019年8月にTJ手術を受け、2020年10月に復帰した。「僕が入団した年に、颯一郎さんがリハビリに励んでいるのを見ていました。前向きにトレーニングされていて、復活した姿も見せていただきました。手術後に球速が上がったので、自分もできることをやっておけば、と思っています」。

 まだボールは握れないが、焦りはない。「1年後の復帰戦でどんな姿をみせられるかというのが勝負。155キロは出したいですね」。プロ7年目を迎える来年は復活した姿を見せつける。

○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者一期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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