「明日1軍にいられるか…」持ち続けた危機感 鷹戦力外→燕2年目で躍動、増田珠が変えた思考

ヤクルト・増田珠【写真:小林靖】
ヤクルト・増田珠【写真:小林靖】

増田珠は今季キャリアハイの62試合出場「今が当たり前じゃない」

 加入2年目で、すっかりヤクルトに欠かせない存在と言えるだろう。増田珠外野手はプロ8年目の今季、キャリア最多の62試合に出場して打率.252、1本塁打、11打点。2023年限りでソフトバンクを戦力外となった経験から、「今が当たり前じゃない。この世界で野球ができているのは貴重だし、とても大事な毎日」とはつらつとプレーしている。

 特に代打での打率.371(35打数13安打)と勝負強さが際立つ。「気持ち的なところは毎年少しずつ成長できているかなと思います。打撃も、少しずつですけどやりたいスイングを打席で表現できるようになってきたのかなって。少しずつですけどね。あとはいい意味で代打に慣れてきたというのもあります」と控えめながらも、確かな手応えを口にした。

 大松尚逸チーフ打撃コーチも「技術的に言ったら、よりレベルスイングができるようになったのは大きい。あとはメンタルで言ったら、やることが決まってブレなくなった。そこの安定性はめちゃくちゃある。自分が取り組んでいることに対して自信を持てるようになったというのが一番です」と26歳の成長に目を細めた。

 横浜高から2017年ドラフト3位でソフトバンク入りした増田だが、2023年オフに戦力外となった。高い1軍の壁に阻まれていた過去を「ホークス時代は、すごく自分を追い詰めていたなと。追い詰めて、苦しいという気持ちが強い中でプレーしていたなというのがありました」と吐露する。

 常勝軍団と呼ばれ、主力だけでなく3軍まで逸材も揃う。ヤクルトでももちろん危機感は持ち続けているが、「(ソフトバンク時代は)明日1軍にいられるかなみたいな。それがより強かったです。そういう気持ちでプレーしていたら、絶対にうまくいかないんですけどね」。実は代打で1本も安打を放ったことがなかった。

 それが新天地ではここまで勝負強さを発揮するようになった。「もちろん苦しいときもあるんですけど、外面だけではなく内面も前向きにというのができるようになってきているかなと。すごく落ちこんできたので、そういうのも少しずつ改善できているかなという感じです。そこを乗り越えて、いかに投手との対戦に集中できるかにフォーカスして頑張っています」と屈託のない笑顔を見せた。

 チームは8月31日に優勝の可能性が完全消滅した。しかし増田の戦いはまだ続く。「まずは最後まで怪我をしないこと。今はスタメンで出られるタイプではないので、代打でしっかり来年に向けてのアピールも含めて、いい場面で打って、ファンの皆さんや関係者の記憶に残るヒットを1本でも多く打ちたいです」。神宮球場にどんどん増える「63」の応援グッズを背に、最後まで走り続ける。

○著者プロフィール
町田利衣(まちだ・りえ)
東京都生まれ。慶大を卒業後、スポーツニッポン新聞社に入社。北海道総局で日本ハム、東京本社スポーツ部でヤクルト、ロッテ、DeNAなどを担当。2021年10月からFull-Count編集部に所属。

(町田利衣 / Rie Machida)

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