球団初の快挙で「おかしくなりました」 オリ山中稜真の“猛省”…ドラ4が立ち返った原点

オリックス・山中稜真【写真:小林靖】
オリックス・山中稜真【写真:小林靖】

開幕1軍から初出場で2安打2打点…6戦目では快挙達成

 球団史上初の「新人初回先頭打者本塁打」などデビューに鮮烈なインパクトを残したオリックスの山中稜真捕手が、打撃の原点に戻りチームに合流している。

「あの本塁打からおかしくなりました。勘違いして大振りになってしまいました。あの時の自分に言うなら『打ったからと言って変わるんじゃないよ』と」。山中が静かに口を開いた。

 山中は神奈川県出身。木更津総合高(千葉)、三菱重工Eastを経て2024年ドラフト4位でオリックスに入団。広角に強い打球を打ち分けるシュアな打撃で春季キャンプから注目を集め、ドラフト1位の麦谷祐介外野手(富士大)とともに、岸田護監督からキャンプのMVPに選ばれた逸材。捕手登録だが、主に外野手として出場している。

 開幕1軍をつかみ、初出場の日本ハム戦(4月5日、エスコンフィールド)でプロ初安打を含む2安打、2打点。出場6試合目の西武戦(4月17日、京セラドーム)では、「1番・左翼」として先発出場し、1打席目に上田大河投手の外角高めのカットボールを左翼席に運んだ。

 新人として球団史上初の快挙。しかし、それが山中の打撃を狂わせることになってしまった。以後、出場6試合で、15打数1安打、5三振と不振を極め、5月5日に2軍落ち。

 ウエスタン・リーグで3割近い打率を残し、6月10日に1軍昇格を果たしたものの、チーム事情で3日後には登録を抹消された。その後は上半身のコンディション不良で7月10日まで戦列を離れたが、復帰後は8月5日の中日戦(バンテリンドーム)で2ランを含む4安打5打点の固め打ちなどで、8月15日に再昇格を果たした。

 打撃向上のきっかけは、打撃練習での気付きだった。「感覚の問題なのですが、ボールを打ちに行きながら呼び込むというのが、頭ではわかっていても体が動かず好不調の波が大きくて。それを強く意識してやっていたら、自分の中でボールの捉え方というか、見え方がズレていたのがわかったんです」と明かす。

激しい外野手のポジション争い「長打を売りに」

 やっとたどりついた打撃の原点。「センター返しを徹底したり、マシンに近付いて速い球をコンタクトしたり、自分に制限をかけるんです」という工夫をこらした打撃練習も活路を開いてくれたのだろう。

「積極的にバットを振って、自分が打てる球を打つ」という意識も変えない。8月16日の西武戦(同)で、0‐1の8回1死2塁で廣岡大志内野手の代打で打席に立ち、初球を狙って二ゴロ(進塁打)に倒れた。「ボールの上っ面の外側をたたいてのセカンドゴロだったので、ショートの頭を狙ったようなイメージの入り方をすればよかったかもしれません」と反省しつつ、「初球を打っていけたことはよかったと思います」と、自分のスタイルを貫けたことには自信を示した。

 足の故障から復帰した西川龍馬外野手、打撃好調の中川圭太内野手、一発の破壊力を持つ杉本裕太郎外野手ら、競争が熾烈なオリックス外野陣。「長打を売りにしていますので、そこは消さずにプロの投手のボールに対応できるように自分の技術を上げなければいけないと思います」。積極的な打撃で終盤のチームの勝利に貢献するつもりだ。

〇北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者一期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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