奥川との投手戦は「過去の栄光」 大学3登板のみ→“2軍4冠”急成長、ドラフト指名待つ24歳

オイシックスの能登嵩都「フォーム、球のバラつきが全体的に減った」
2軍球団からのドラフト指名に“最有力”と目されている男がいる。オイシックス新潟アルビレックスBCの能登嵩都投手は今季、イースタン・リーグで防御率(2.60)、勝利(12)、勝率(.750)、奪三振(102)の“投手4冠”を成し遂げ、「今年こういう成績を残せているので、チャンスがあるのかなと思っています」と言葉に力を込めた。
加入1年目だった昨季は35登板(6先発)で5勝4敗、防御率4.88に沈んでいたが、激変した。「フォーム、球のバラつきが全体的に減ったのと、年間を通して調子の波を安定させられているので、そこがいいのかなと思います」と自己分析するように、四球で崩れて自滅することが減り、立て直す力がついたことで安定感を増した。7月にはフレッシュ球宴にも出場し、1回無安打無失点1四球と大舞台でも存在感を示した。
北海道出身。旭川大学高、桐蔭横浜大を経て2024年からオイシックスに入団した。旭川大学高時代は持丸泰輝捕手(現広島)とバッテリーを組んで甲子園に出場。初戦で奥川恭伸投手(現ヤクルト)擁する星稜高と激突し、9回1失点完投も奥川に投げ負けた。「言っちゃえば過去の栄光みたいな感じなので、特別な思いはないです。でも今でもたまに『あのときの能登』みたいなことは言われますね」と控えめに微笑んだ。
大学3年時に緊張性頭痛で約2か月動けず「ずっと寝ていたり…」
自身はプロ志望届を出さずに大学進学を選んだ。しかしリーグ戦の登板は通算3試合。「思うような結果を出し続けられなかったので苦しかったです」と振り返る4年間の中で、特に不安に襲われたのは大学3年の夏だった。
「歩く振動で頭が痛くなる。寮からグラウンドまでは行くんですけど、室内でずっと寝ていたり。全然動けないし、ご飯もあまり食べられないような状態でした」。2週間が経っても治らない。病院をいくつか回っても治らない。「緊張性頭痛」と診断され、実家に帰って休養することを決めた。それにより徐々に回復し、再び復帰することができたが、2か月ほどは動くことができないほどのつらさを味わっていた。
今季開幕投手を託し、エースとしての期待をかけてきた武田勝監督は「今年に懸ける意気込みがすごく表れていたので抜擢しました。期待通りのピッチングをしてくれた。どの球種でもストライクを取れて、どの球種でも勝負できるようになったのが勝てた要因ですね」と分析。「ずっと2軍でこの生活リズムでやっているから、(ドラフトに)かかってしまえばスムーズに対応できると思う。まずはスタートに立てれば一番いいですね」と指名を願った。
最速150キロの直球とカーブやチェンジアップなど縦の変化で打者を翻弄する24歳の座右の銘は「天下無双」。人気漫画「バガボンド」を読んでその言葉の意味を考え、グラブにも刺繍を入れている。最強への道のりへ、まずはその扉を自らの手でこじ開ける。
(町田利衣 / Rie Machida)