出場機会の増減を握る重要な指標　苦しんだ西武・栗山巧やロッテ・角中勝也ら…成績との親和性

フェアゾーンの打球と安打の割合を示す「BABIP」

　打球がフェアゾーンに入った際、本塁打を除いて安打となる割合を示す「BABIP（Batting Average on Balls In Play）」は、セイバーメトリクスにおいて重要な指標の一つである。一般的な基準値は.300前後とされ、運の要素に左右されやすい性質を持つ。

　このため、今季のBABIPが.300を大きく下回った打者は「運に恵まれなかった」と見ることができる。ここでは、2025年に20打数以上を記録しながらBABIPが.280以下だった選手を、数値に応じて4段階に分類し、来季の“バウンスバック候補”として紹介する。

　まずは2025年に20打数以上を記録し、BABIPが1割台に終わった選手たちだ。対象となる12人はいずれも打率.167以下。BABIPが.200を切ると、極端な低打率に陥るリスクが高く、全員が50試合未満の出場にとどまった。BABIPの悪化が出場機会減少にも直結していることがわかる。

　通算2000安打の西武・栗山巧外野手、首位打者2度のロッテ・角中勝也外野手は、通算BABIPが.300超の好打者だが、今季はそれぞれ.087、.167と不振。経験豊富な両者にとってもBABIPの低下が打撃不振を招いた格好だ。西武・岸潤一郎外野手と日本ハム・上川畑大悟内野手も同様で、打率.167・OPS.460台に沈んだ。BABIP1割台の打者たちは、来季の数値回復が打撃復調のカギを握る。

　次に、BABIPが.250未満だった選手たちを見ていく。この層では、BABIPが.229以下の8人はいずれも打率1割台。一方で.230台の打者は半数が打率.200超を記録し、.242以上の選手は全員が打率.200台に乗せている。BABIP上昇に伴い、打率も緩やかに改善している様子がうかがえる。オリックス・福田周平内野手、ロッテ・中村奨吾内野手、日本ハム・松本剛外野手ら実績ある打者も、BABIPの大幅な低下で打率1割台に苦しんだ。通算値との差は.076以上。数値が戻れば復調の可能性は十分ある。

　また、楽天・小郷裕哉外野手とロッテ・佐藤都志也捕手も昨季の主力から一転、BABIP悪化で打撃成績が低下。通算打率.285のオリックス・森友哉捕手も打率.205とキャリアワーストに終わり、BABIPが打率へ与える影響を改めて示す形となった。一方、楽天・太田光捕手と西武・長谷川信哉外野手はBABIPが低かったものの、110試合以上に出場。長谷川は初の規定打席に到達し、守備面での貢献が数値のマイナスを補った。

鷹・山川穂高、中村晃もBABIP低下で成績も悪化

　次は、BABIPが.270未満だった選手たちである。日本ハムのアリエル・マルティネス捕手と楽天・小森航大郎内野手を除く19人は打率がすべて2割台で、100試合以上出場した選手も7人。BABIPが.250を超えると打率も安定し、出場機会が増える傾向にある。西武・源田壮亮内野手は通算打率.260前後を維持してきたが、今季は打率.209。BABIPが.255と通算.312を大きく下回ったことが影響したとみられる。

　ソフトバンク・山川穂高内野手、中村晃外野手もBABIP低下で成績が悪化。オリックス・宗佑磨内野手は2年連続で打率.235だが、同.270台だった2021、2022年のBABIPはいずれも.296以上であった。BABIP上昇が復調のカギになる。

　また、ソフトバンク・緒方理貢外野手、ロッテ・山本大斗外野手、オリックス・大里昂生内野手、西武・古賀悠斗捕手、ロッテ・友杉篤輝内野手の5人はBABIPが.260台ながら通算値との差が小さい。いずれも一軍経験が浅く、来季にBABIPが上昇すれば大化けの可能性もある。

　最後に、BABIPが.280未満だった選手を見ていく。この層では打率が2割を下回る打者はおらず、全体的な改善は見られるが、打率.250以上を記録した選手もいない。依然として低BABIPは成績の足かせとなっている。オリックス・頓宮裕真内野手と日本ハム・万波中正外野手は2桁本塁打と規定打席到達を果たしたが、BABIPの低さもあり打率では苦戦。西武・外崎修汰内野手、楽天・鈴木大地内野手、小深田大翔内野手も通算BABIPより.020以上低い水準で、打率が落ち込んだ。来季のBABIP回復が鍵となる。

　西武・仲田慶介外野手、楽天のマイケル・フランコ内野手、ロッテ・池田来翔内野手、西武・山村崇嘉内野手は通算BABIPが低い一方、今季は.270台ながらキャリア平均を上回る打率を記録。BABIPの推移次第では、今後さらなる成績向上も期待できる。

　BABIPの悪化により成績を落とした打者の中には、かつて主力としてチームを支えた経験を持つ選手も多い。一方で、将来性を秘めた若手がBABIPに恵まれず苦戦した例も目立った。BABIPは長期的には一定の水準に収束する傾向があり、今季不運だった打者が来季に反転する可能性も高い。数値の上昇が成績の回復を後押しするのか。2026年シーズンの注目点である。

（「パ・リーグ インサイト」望月遼太）

（記事提供：パ・リーグ インサイト）