オリ田嶋大樹、8年目で掴んだ新境地 明かした“水のごとし”…なくなったストレス

今季は18試合の登板で7勝&防御率3.13
オリックスの田嶋大樹投手が、新境地を開き8年目のシーズンを“ノン・ストレス”で過ごした。
「しっかりと成長を感じることができた1年でした。いろんな形に変えることができる『水』を意識して、自分の直感を信じながら投げやすいようにやってきました」。田嶋大がシーズンを貫いた考えを明かした。
田嶋大は佐野日大高(栃木)、JR東日本から2017年ドラフト1位でオリックスに入団。左腕からのストレートやスライダー、チェンジアップなどを武器に1年目に6勝を挙げ、2022年にはキャリアハイの9勝(3敗)をマークした。今季は18試合に登板し、106回1/3を投げ自己最多の2完封を含む7勝(7敗)を挙げ、防御率3.13とローテーションを守った。
「2完封が一番でした」と田嶋大。4月30日のロッテ戦(京セラドーム)で9回を101球、被安打2、9奪三振、無四球。初回と3回を除き走者を許さず、8回まで三者凡退を重ねた。ベンチで見守っていた厚澤和幸投手コーチが試合後に「今日はタジ(田嶋大)の時間でした」と脱帽する圧倒的な投球だった。7月16日の楽天戦(同)では、9回を自己最多の134球の熱投で、被安打6、7奪三振、無四球。5、6、7回と走者は背負ったものの粘り強い投球で投げ抜いた。
快投を支えたのは、意識の変化だったという。「僕の師匠みたいな人がいるんですが、いろんな話をする中で『型にはめちゃダメだ。水のようにならないと』という話になって、そうだなと思ってなるべくそうなれるようにしています」と明かす。こうでなければダメだという固定観念を捨てた。「セット(ポジション)で入りたかったらセットで投げるし、ワインドアップで投げたければワインドアップで投げるという感じです。次はこうしようという考えもないんです。1週間、しっかり練習をしてワインドアップが良ければそうするし、セットが良ければセットで投げます。あまり考えてはいないですね」。水は自由に形を変え、器(相手)によっても姿を変える。変幻自在の考えは、投球にも大きな影響を与えたというわけだ。
「マウンドでは出ないのですが、何かあれば出てくるワードですね。これまでならゼロか100で考えたり、こうすべきだったという考えが出たりしたのですが、そういう時に『水にならなきゃ』『もっと柔軟に考えよう』となるんです。水はその時々で形を変えるんで、こういうパターンならこう、という思考になろうという考えもない。この考えならストレスはありません」
来季で30歳を迎える田嶋大の、オフのテーマは「体力強化」。これまでは30歳でタイトルに近付く成績を残そうと思っていたが、「価値観が変わりました。1年でも長く野球をやり続けたい。あと10年は1軍でチームの勝利に貢献したい」。変幻自在に自由な発想で、形を変えて成長し続ける。
〇北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者一期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。
(北野正樹 / Masaki Kitano)