初GG賞も…源田壮亮に「勝てるところはない」 オリ紅林弘太郎の本心…掲げたハードル

待望の受賞も「1年だけなら誰でもあり得ること」
「マジか、という感じ。ワンチャンあるかなと思っていましたが。1年だけなら誰でもあり得ること。3年連続して獲って、初めてちょっと自信がつくかなっていう感じです」
初の「三井ゴールデン・グラブ賞」受賞にも、オリックス・紅林弘太郎内野手に慢心はなかった。
受賞者の正式発表が行われた11月12日午後5時、紅林の姿は、メイン球場から離れた室内練習場にあった。3時過ぎから続けるストレッチが延々と続き、残る選手は紅林ただ一人。5時半近くになって練習が終わり、照明が落とされ真っ暗になった練習場でノートにメモを書き込む紅林の手元を、スタッフの携帯電話のライトが照らした。
欲しくてたまらない賞だった。2年前の2023年、記者投票で114票を獲得した。しかし、受賞したのは源田壮亮内野手(西武)。源田の115票に対し、紅林は114票。得票差は「1票」だった。「獲れるかもと思っていただけに、本当に悔しくて。でも、あの1票というのは僕の中で、メチャメチャ大きな差だと感じて、次はちゃんと獲れるようにと思って毎年やっていました」と明かす。
昨年は、源田(145票)、今宮健太内野手(95票)に次ぐ3位だが、獲得したのはわずか10票だった。今回は、昨年まで7年連続して獲得している源田の74票を「5票」上回った。「大型で肩(が強い)という部分も評価してもらえたのかもしれません。でも、今はまだ源田さんや今宮さんの時代。宗山(塁内野手、楽天)もうまいですし。(その中で)僕が勝てるところはないと思っています」と謙虚に自分を見つめる。
今シーズン中盤から、体の使い方と真剣に向き合うようになった。好不調の波を小さくすることが狙い。「子どもが生まれた責任感も、もちろんあります」。責任感が増し、パパの自覚も生まれた。入団時から、先輩選手が「ライバルだけど練習し過ぎてけがが心配になる」と驚いたほどの練習熱心。1年目の春季キャンプでは、ネットで購入したティー打撃時にボールを置く器具を持参したほど。宿舎に引き上げるのはいつも最終組だった。
今、取り組んでいるのはストレッチ。体のパーツを無駄なく使い出力を上げられるような動きを繰り返す。ヨガのような姿勢を取ったり、箱の上からジャンプをしたり。何種類もの動きを約2時間かけてじっくりと毎日、繰り返す。重いボールを垂直に放り上げる運動で滞空時間が伸びたり、打撃練習での飛距離が伸びたりするなど、徐々に変化は表れているという。
単調なストレッチの後の楽しみは、留守宅とつなぐ電話だ。「子どもの姿を映像で送ってもらうんです。これが一番、元気が出ます」と顔をほころばせる。
練習の量にもこだわる。「まだまだ、全然足りないと思います。もっと質を上げないといけないと思いますが、量をやった中でないとわからないことがあります。初めから質を求めちゃダメ。まあ、現役を終えるまでやり続けるタイプだと思います」。名実ともに一流選手としてのスタートに立ったばかり。さらなる高みを目指す。
〇北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者一期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。
(北野正樹 / Masaki Kitano)