最下位ロッテを「クビになるのは当たり前」 退団→招いた“事態”に「申し訳ない」

ロッテ退団の荻野貴司、現役続行の思いを説明
球界屈指のスピードスターが、悩める胸中を明かした。今季限りでロッテを退団した荻野貴司外野手は、コーチ就任の打診を断り、現役続行を目指して動いている。ロッテ一筋で16年間プレーし、10月7日に退団を発表。「まだ全てを出し切った感じがしません」と新天地を求めて前を向く。
「もう少し現役をやりたいという気持ちがあるんです。ただ『できるかなぁ』という不安も少しあります。でも『今年でやめます』と言うと、ずっとモヤモヤしたものが残りそうなので……。できるか分からないですけど、もうちょっとやり切りたいなという感じです」
11月上旬、来季を見据えて右膝の治療のため都内の病院を訪れた荻野。プロ通算1146試合に出場して1143安打、260盗塁、打率.283を記録し、最多安打や盗塁王、ゴールデングラブ賞を獲得するなど攻守にチームを支えてきたが、今季は納得がいく状態まで上げられなかったという。
1年目に負傷し、計3度手術した古傷である右膝の状態がキャンプ中から思わしくなく開幕2軍スタート。「ずっと痛くて、長引きました」。実戦復帰は6月だった。当初は2試合続けての出場は難しく、休養を挟みながら出場。それでも徐々に出番を増やし、34試合で打率.317をマークした。
ロッテの1軍は8年ぶりの最下位と低迷。シーズン終盤は来季を見据えて若手を積極的に起用していた。40歳の荻野には最後まで昇格の声はかからず、16年目で初めて1軍出場がないままシーズン終了。ただ、そのことには納得しているという。2軍で結果を残していたものの「僕としては、『何で上げてくれないんだ』という思いはなかったです」と振り返る。
「結果だけ見たら3割打っていますけど、自分の感覚的には全然1軍でいけるような調子ではなかったんです。打撃だけじゃなく、走塁にしても、1軍の舞台ですぐにいけるかと言われたら、ちょっと違うんじゃないかなとずっと思っていました。だから不満は全くなかったですね」
「球団が悪者みたいになって申し訳ない気持ち」
そんな状況で球団から話があったのは9月上旬。「『引退を考えているか?』という感じから始まったと覚えています。自分としては、今年の動きで終わるのは納得いかなかった。もうちょっと悔いが残らないところまでやって終わりたいと思ったので『まだ引退は考えてません』と球団に伝えました」。現役続行の思いを訴えたのである。
「球団としては『引退する』と言ってほしかったのかもしれません。球団が『引退してほしい』と言うより、自分の口から言ってほしかったと思うんですけど……。『現役をやりたい』と伝えたところ『もうちょっと考えてくれ』と言われました」。それから2週間余り。再び球団と話し合う機会があった。
「『どうだ?』と言われて『気持ちは変わってないです』と答えました」。コーチのポストを用意する話も、そこで出たという。それでも、まだプレーを続けたい思いは消えず、退団の道を選んだのである。
その決断に後悔はないが、気になることがある。「退団が発表された時、球団(ロッテ)が悪いみたいな感じになったんです」。功労者である荻野の退団に、一部のファンから球団を批判する声が上がったことに心を痛めた。「球団は何も悪くないし、僕も喧嘩してやめたわけじゃない。球団が悪者みたいになって申し訳ない気持ちです。僕が現役にこだわったのでクビになるのは当たり前。お世話になった球団には凄く感謝しています」。
感謝の気持ちはロッテファンにも向けられた。「いつも凄い応援です。本当にありがたいです。いい時も悪い時も、変わらず応援してくれる。心強いですよ。ホームだけじゃなく、ビジターの試合でも人数は少なくても、まとまりがあって声が届きます」。退団発表後も「『どこに行っても、ロッテじゃなくても応援します』と言ってくれるファンがいるんです」と話し「凄くありがたいです」と目を細めた。
「ここからが本当の自分を試されるような気がします」。16年間を走り抜けた男が貫く、真っすぐな思い。新たな道が見つかることを信じて、準備を進めていく。
(尾辻剛 / Go Otsuji)