守護神から突然の“指名”「じゃあ来る?」 投手歴3年…19歳右腕に訪れた転換期

中日・有馬恵叶【写真:木村竜也】
中日・有馬恵叶【写真:木村竜也】

接点ゼロの守護神から突然、自主トレに誘われた

 ルーキーに“思わぬ転機”が訪れた。中日の有馬恵叶投手は1年目の今季、2軍登板こそゼロだったが、悔しさを胸にひたすら個の能力強化に没頭していた。そんな夏の日、思いも寄らぬ人物から自主トレに誘われた。“接点ゼロ”の先輩からの一言は、衝撃そのものだった。

 2024年聖カタリナ学園からドラフト6位で指名。身長は190センチ、体重は80キロほどと、体づくりはこれからだが可能性に満ち溢れている。さらに投手を本格的に始めたのは高2から。たった2年でプロの世界に飛び込んだ“逸材候補”だったが、1年目は登板ゼロに終わった。

 それでも黙々と練習に励んでいた中、思ってもみなかった誘いを受けた。8月、2軍施設のトレーニングルームでウエートに励んでいた時のこと。右肘の故障で2軍で調整していた守護神・松山晋也投手から突然声をかけられた。

「自主トレどこでやるの?」。突然の言葉に戸惑いつつも「まだ決まってないです」と答えると、返ってきた一言に耳を疑った。「じゃあ俺のとこ来る?」。チームの中心人物で接点などなく、話したこともほぼない。憧れであり目標である先輩からの誘いに「え? って思いました。でもすぐお願いします! と言いました」。わずか数分の出来事は今でも鮮明に覚えている。

 思わぬ形で手に入った大きなチャンス。12月の自主トレに向け、有馬の胸には明確な目標がある。「松山さんは理論に基づいて取り組むタイプと聞いています。自分もそういう考え方なので、多くのことを吸収したい。新しい自分になれるように臨みたい」。

落合監督も寄せる期待「一番成長速度が速い」

 その思いを胸に挑んだ秋季キャンプ。ここで有馬は落合英二2軍監督と“二人三脚”で特訓の日々を過ごした。毎日昼過ぎから夕方までずっと付きっきり。基礎動作を徹底する練習は過酷だった。

「足とかこんなんですよ」。サンダルからのぞく親指は皮がめくれ、血豆が残る。「1日目で全部剥けてしまって。次の日は歩けなかったですね」。ただ、ボロボロの足を見つめる顔には充実感も見える。

 まだまだできないことも多い。ただ、コツを掴んで自分のものにする能力には長ける。秋季キャンプ中には落合監督から「関わってきた中で一番成長速度が速い」と直接言葉をかけられた。「めちゃくちゃ嬉しい言葉でした」。思わず19歳らしい笑顔がこぼれた。

 フェニックスリーグでは自己最速を2キロ更新する148キロを計測。努力が実を結び始めている。「まずは2軍でしっかり結果を出して、後半に1軍へ上がれたらベスト」。努力と期待に支えられた19歳の右腕。来季さらなる飛躍を目指す。

(木村竜也 / Tatsuya Kimura)

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