敗北に涙、長期休養で戦った恐怖 卒業の“速すぎるチア”、5年で一変した人生

dianaを卒業するAkiさんはリレー企画を機に“速すぎるチア”として話題に
“速すぎるチア”がついに、横浜スタジアムに別れを告げる。横浜DeNAベイスターズオフィシャルパフォーマンスチーム「diana(ディアーナ)」のAkiさんは、今年度限りで5年間の活動に終止符を打つ。実は1年前からこの卒業を決めていた中で、走り抜いたラストイヤー。「後悔はありません。人生の中でこんなに濃い5年間はないんじゃないかというくらい、本当に濃い5年間でした」と曇りのない笑顔を見せた。Full-Countのインタビューでは、5年間の秘話や“ラストラン”への思いを語った。
幼少期から、DeNAファンだった両親の影響で横浜スタジアムに足繁く通っていた。すでに幼稚園生のときからダンスを習っていたが、意外にも「最初の夢はリリーフカーを運転するお姉さんだったんです」と打ち明ける。救援投手とともに現れる姿がヒーローに見え、両親に「私もあれをやりたい!」と宣言した。その後ダンスに熱中する中でdianaに憧れるのは自然の流れだった。
オーディション当時のことを、dianaマネジャーは懐かしそうに回顧する。「面談のときは話すことがまだ少し苦手だったようで、予定していた面談やダンス審査の後に改めて“おかわり”で面談をしました」。抜群のスタイル、明るさを武器に合格を掴むと、“不安視”されていたMCもメキメキ成長。5年目の今季は最年長メンバーとして、ときに厳しい言葉をメンバーに掛けるなど頼もしい存在になっていた。
活動1年目は2021年。まだコロナ禍の影響で声出し応援は制限され、観客数も上限がありスタジアムは満員にならなかった。それでも忘れられない光景がある。「初勝利のときの景色をすごく覚えています。勝ったときのファンの皆さまの笑顔、横浜スタジアムがひとつになった瞬間。こんなにも素晴らしい経験をすることはなかなかないと思いました。4月4日の日曜日っていうのも覚えているんです」と思い出すように言った。
“転機”となったのは、2023年に始まったイニング間イベント「Hisenseハマスタバトル」だった。diana3人と予選、抽選で選ばれたファン3人が繰り広げるリレーは、ガチすぎる走りが話題を呼び、あっという間に超人気イベントに。圧倒的な速さを誇り、不動のアンカーを任されたのがAkiさんだった。陸上経験はないが、小学生時代から毎回リレーの選手を務め、徒競走は負けた記憶がないというほどの俊足。それだけにリレー企画を聞いたときには「正直ちょっと『ヨシッ!』とは思いました。自分の特技のひとつでもあったので、チャンスだなって」と笑う。とはいえ最初は前向きな気持ちばかりではなかった。
22日のファンフェスでラストラン「私らしく全力で楽しみながら」
「それまでは声援やクラップで盛り上げていたので『あ、ここでリレーをするんだ』っていう戸惑いがあったのが正直なところです。でも一戦一戦終えていくごとに、横浜スタジアムのボルテージが上がっていくのを肌で感じて、私たちもより負けられないと思いました。オフィシャルパフォーマンスチームにはダンスが一番のメインで入ったので、ダンス以外にこんなに体を使うことってあるんだなと思いましたし、反響の大きさに驚きました」
知名度も爆上がりし、名前を呼んでくれるファンも増えた。しかし全てが順調だったわけではない。2023年シーズン後半戦には怪我により約2週間、全ての活動を休んだ。「このまま試合に出られず終わってしまうのでは」と恐怖感と戦いながらも、メンバーのサポートもあり最終盤に復帰。テレビ越しに「頑張れー! いけー!」と声を張り上げていたリレーにも戻ってくることができた。勝利で飾った復帰戦は、忘れられないレースのひとつだ。
居残りでバトン練習を行い、失敗した日は映像を振り返り反省会もした。初めて連敗した日、大敗を喫した日は悔しさのあまり涙を流したこともあり、「こんなにも自分って負けず嫌いなんだなと知ることができました。涙が出たときは、自分でもちょっとビックリしました」。2023年にTBSで放送された「SASUKE」に出場した際には、序盤で池に落下してしまい、悔しさのあまり思わず「チックショー」と叫んでいた。後に「あの言葉大丈夫だったかな……」と考えてしまったという微笑ましいエピソードもある。
11月22日の「BAY BLUE FESTIVAL ~ BAYSTARS FUN! DAYS ~ Supported by ありあけハーバー」では、超異例の卒業企画「ハマスタバトル 〜diana Aki LAST RUN〜」が行われることになった。dianaマネジャーは「dianaを全国区にしてくれた立役者でもあり、認知度抜群。元気印です」とAkiさんを形容する。“最後の舞台”が用意されたのも、そんな功績を称えてのものだろう。
「横浜スタジアムでまたファンの皆さまの前で走らせていただけることがすごくうれしいですし、本当に光栄なことだなと思います。支えてくださった全ての方々に感謝の気持ちを込めて、私らしく全力で楽しみながら、勝ちにこだわって走り抜きたいと思います」とAkiさん。最後の最後まで、明るく笑顔で駆け抜ける。
(町田利衣 / Rie Machida)