「世界最速170キロ超え」掲げる西武の怪物左腕 潜在能力を示す“10.55”と口にした反省

奪三振率は今井を上回る驚異の10.55も、課題の与四球率は5.91
日本人左腕最速のMAX160キロを誇る西武・羽田(はだ)慎之介投手が、170キロと世界最速を目標に掲げた。東京・八王子学園八王子高からドラフト4位で入団し4年目のシーズンを終えた21歳は、今年7月14日に東京ドームで行われた日本ハム戦で、自身がマークしていた159キロの記録を1キロ更新。俄然注目度が増している。
羽田は21日に埼玉・武蔵丘ゴルフコースで行われた球団納会ゴルフに出場。スコアは「149」の“大叩き”だったが、191センチ、84キロの“メジャーサイズ”の体格を誇る左腕としての期待は高まるばかりである。
1軍デビューを飾った昨季は、9試合1勝3敗、防御率2.76。剛球左腕として一躍注目を浴びた。そして今季はさらに出番を増やして24試合に登板し、1勝1敗、防御率2.95と成長の跡を見せた。ただ、本人にとっては満足にほど遠かったようで、「1軍で投げるからには、もっといい成績を挙げなければならなかったと思います。なぜ結果が出なかったのかを考えて、与四球率という課題が浮き彫りになりました」と具体的な反省を口にするのだった。
羽田は今季、21回1/3を投げて25三振を奪い、奪三振率(9イニングあたりの奪三振数)は10.55に達した。奪三振率は7.5~8.0で高い部類、9.0超なら典型的な三振を取れる投手といわれ、西武のエースで今オフ、ポスティングシステムを申請してメジャーリーグの球団と交渉中の今井達也投手でも9.79(163回2/3、178奪三振)だったことを考えると、羽田の奪三振率がいかに高いかがわかる。
一方、羽田自身が課題に挙げた与四球率(9イニングあたりの与四球数)は5.91(14四球)で、こちらは2.0以下が超一流といわれ、今井が2.47だったのに対し、羽田は四球が多すぎたといえる。
8月13日に左肘痛で2軍落ちしシーズンを終えるも、来季へ万全アピール
「来季は結果を出したといえるように、登板数を増やして防御率を良くしたい。そのためにも与四球率を下げなくてはと思っています」と力を込める羽田は、その上でやはり、「スピードも出したいですね」と笑う。
「課題に取り組みつつ、来年はまず1キロ速い161キロ。将来的には170という数字を出してみたいと思います」と自身の未来図を描く。“世界最速記録”はレッドソックスの左腕アロルディス・チャプマン投手の170.3キロ(105.8マイル)といわれているが、羽田も「(世界最速を)目指していくべきだと思います」と一歩も引く気はない。
昨季は1軍登板9試合中3試合が先発だったが、今季は24試合全てがリリーフ。来季も当面はリリーフが基本線となる。また、今年は8月13日に左肘痛で出場選手登録を抹消されると、2軍戦登板もないままシーズンを終えてしまったが、本人は「肘の状態は問題なし。もうピッチングも始めています」と来季へ向けて万全をアピールする。
羽田をルーキーイヤーから3年間、ファーム監督として手塩にかけて指導し、今季から1軍を率いている西口文也監督は「来季は今のところ(羽田の)先発は考えていません。まずしっかり怪我を治して、投げていって、それからの話です」と慎重に言葉を選ぶが、底知れぬポテンシャルを秘めた左腕に対する期待は、隠しようもない。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)