「それで越えるの?」痛感した格差 大阪桐蔭からプロ入りも…19歳“大砲候補”が漏らした本音

西武・ラマルが1年目で感じたプロの壁「甘い世界ではない」
沖縄の澄んだ空に、乾いた快音が響き渡った。23日に開幕した「ジャパンウィンターリーグ」。その初戦、第1打席。西武の育成ルーキー、ラマル外野手が放った打球は、豪快な放物線を描いてレフトスタンドへ突き刺さった。「自分の長所は長打力。1打席目で打てたのは自信になります」と充実感が漂う一方で、1年目にして味わったプロの厳しさと、あまりに高かった“壁”への畏怖があった。
名門・大阪桐蔭出身という看板を背負い、自信を持って飛び込んだプロの世界。しかし、現実は冷酷だった。投手の球速、変化球のキレ……。「全体的にレベルが上がって、その分たくさん練習して追いつかないといけないと思いました」。
何より衝撃を受けたのは、先輩打者たちのフリー打撃だ。「それでフェンス越えるの? という驚きもあって、焦りを感じました」。軽く振っているように見えて、打球は軽々とスタンドへ。目の当たりにした差に、18歳の心に“迷い”が生じた。
プロの壁はあまりに高かった。3軍では7本塁打、32打点を挙げたが2軍の出場はゼロ。「そんな甘い世界ではないです。それは分かっていたことなので、やっぱりかとも思いました」。覚悟していたはずのプロの凄みを肌で感じた。
追い打ちをかけるように、試合で帰塁の際に肩を亜脱臼。夏場をリハビリに費やすことになった。それでも、この「空白期間」が自分を変えた。「悔しいシーズンになりましたが、自分の弱点でもあった体幹や体の使い方を勉強できました」。秋のフェニックス・リーグでは1試合で2本の二塁打を放つなど、怪我の功名を確かな成長へと変えつつある。
「中村剛也さんのような打者になりたいですし、自分のものにできたらなと思います」。目標は偉大な先輩だ。名門のプライドを一度捨て、挑戦者として這い上がろうとする未完の大砲。その瞳に、もう迷いはない。
(木村竜也 / Tatsuya Kimura)