育成3年で見えた限界…引退決断も速攻で“取り消し” 救った今井達也の言葉

取材に対応した西武・是澤涼輔【写真:宮脇広久】
取材に対応した西武・是澤涼輔【写真:宮脇広久】

西武・是澤が現役続行を決めた理由

 西武に是澤(これさわ)涼輔という捕手がいる。背番号「122」の育成選手で、2022年の育成ドラフト4位で法大から入団したが、支配下登録を勝ち取れないまま3年が経過。本人は今季限りで引退する意向を固めかけた。しかし、実は「多くの投手が是澤に受けてもらいたがる」という類まれな才能の持ち主で、周囲が熱心に説得。最終的には、ポスティングシステムでメジャーリーグの球団と契約交渉中の今井達也投手の言葉に背中を押され、来季の現役続行を決意した。

 是澤は24日、埼玉県所沢市の球団事務所で契約更改交渉を行い、現状維持の来季年俸400万円(金額は推定)でサインした。「球団からは『どんな時でも一生懸命やっていた姿がよかったね』と言っていただきました」と笑顔を浮かべた。

 是澤の魅力はフレーミングの能力と、周囲の人々に愛される人柄にある。編成部門トップの広池浩司球団本部長は「本当に、彼に受けてほしいと言う投手が増えているのです」と証言。広池本部長自身も現役時代に投手として広島で12年間活躍したとあって、「是澤は試合でもブルペンでも、投手を孤独にさせません。どんな状況でも一生懸命、投手に寄り添い、盛り上げようとしています。それが投手陣に伝わっているのだと思います」と“投手目線”で高く評価している。

「入団した時に担当の竹下(潤)スカウトから『投手から受けてほしいと言われる捕手になってほしい』という言葉をいただいて、その面では3年間で成長できたと感じています」

 しかし、8月頃には今季限りで現役を引退する意向を固めかけた。「開幕当初、イースタン・リーグで3割あった打率がだんだん下がってきて、とうとう1割7、8分になり、自分を選手として客観的に見て、もうきついのではないかと思いました」と振り返る。この時期にちょうど球団のスカウト会議が開かれ、複数のスカウトから「来年はどうするんだ」と問いかけられた是澤は「辞めようかなと思っています」と返答してしまう。

ドラフト1位・小島大河の加入、野村大樹の転向で競争は激化

 ところが、これに周囲はこぞって反対。特に、今井が是澤のフレーミングを高く評価していると人づてに聞き、心が動いた。「今井さんの言葉を聞いて、慌てて竹下スカウトに連絡して『弱気なことを言って、すみませんでした』と謝りました」と笑う。

「今月22日に今井さんと顔を合わせることができたので、直接『ありがとうございます』と感謝の気持ちを伝えました。今井さんからも『頑張ろうな』と言っていただきました」と是澤。広池本部長も「彼は真っすぐな性格なので、落ち込む時も真っすぐ落ち込んでしまうところがあって、心配していました。『また頑張る』と言ってくれて、うれしいなと思っています」と胸をなでおろした。

 もっとも、球団は今年のドラフト会議で“強打のキャッチャー”明大・小島大河捕手を1位指名。さらに、戦力外通告を受けた野村大樹内野手も捕手として育成選手契約を結び直す方向で、是澤にとっては支配下選手登録へのハードルがまた高くなった。

 それでも、もう迷いはしない。「打撃のいい捕手が多く入ってきますが、僕はフレーミングを中心に、守備にアイデンティティを持っているので、そこを前面に押し出していきたいと思います」。ライバルたちとの“生き残り”を懸けた争いに、真正面から臨む覚悟だ。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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