齋藤響介が悔やむ“迷い”「腕が触れなくなった」 フォーム修正が招いた怪我…誓った4年目の飛躍

3年目右腕の齋藤がリハビリ経て復活へ「いろんな経験できた」
肘痛でリハビリを続けているオリックスの3年目・齋藤響介投手が11月末からキャッチボールを再開した。山本由伸投手(ドジャース)が「ネクストブレーク選手」として挙げた逸材が、2年ぶりの1軍マウンドを目指す。
「あんまりよくない1年でした。でもフォームを、イチからいじったことはなかったし、いろんな経験はできたと思います」。2か月ぶりのボールの感触を確かめた齋藤が前を見据えた。
齋藤は盛岡中央高(岩手)から2022年ドラフト3位で入団。最速152キロのストレートとキレのよい変化球を武器とする右腕で、MLB挑戦前の山本が「ネクストブレーク選手」として挙げた逸材だ。
2年目の昨季は8試合に登板し2勝3敗。“5勝以上”を目標に掲げて臨んだ今季は、3月4日の楽天とのオープン戦で、打者9人に6安打を浴び7失点。1死を取っただけで降板となった。結局、開幕1軍を逃し、ウエスタン・リーグでも大量失点する登板が続いた。
「投げる怖さから、腕が振れなくなってしまった」と振り返ったのは、7月9日の中日戦。今季限りで現役を引退した中田翔氏に、真ん中外寄りの144キロの直球を左前に運ばれた。この後、2四球で満塁のピンチを招くと押し出し四球で先制点を許した。「(捕手が)インコースに構えたのですが、甘くいって打たれたらと思ってしまって。左打者には内角を突けるのですが、右打者には抜け球が結構、多くて」。迷いが投球の幅を狭め、自らを追い込んでしまっていた。
腕が振れないことで球速も落ちた。球速を戻すため下半身を使うフォームに修正。球速は回復したが、腕が振れるようになったことの反動もあってか、右肘を痛めてしまった。「体重移動など体の使い方をメインにやってきて、投げる怖さはなくなったのですが肘を痛めてしまって」と悔しさを滲ませた。昨季は2軍で14試合に登板し1勝5敗、防御率4.71。1軍のマウンドには立てないまま終わってしまった。
11月から再開したキャッチボールは、25メートルを5、6割の力で投げる。リハビリでのウエートトレーニングと、オフに入り食事量を増やしたことで入団時に70キロだった細身の体は78キロになった。先輩たちからも「響ちゃん」と呼ばれる愛くるしい表情も、21歳になってちょっぴり大人の雰囲気が漂う。
「(1軍で投げた)去年の記憶はあるんですが、今年は投げていないんで早く投げたいという思いが強いですね」。春季キャンプ中には本格的な投球もできる見込み。齋藤は投げる喜びを感じながら、来季のブレークを心に誓う。
〇北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者一期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。
(北野正樹 / Masaki Kitano)