過去にいくつものドラマ 語り継がれる代打の形

プロ野球を彩ってきた代打職人

 野球には代打というシステムがある。打席に回ってきた選手に代わって、別の選手が打席に入る。交代でベンチに下がる打者、送り出す監督、打席に入る選手、それぞれに様々な思いが交錯する。過去にはプロ野球でも高校野球でもいくつものドラマがあった。

○代打の神様(代打の切り札・代打男)

 プロ野球では、いつの時代にも勝負所で必ず出てくる代打職人がいる。阪神・八木裕、関本賢太郎という背番号3はタイガースの歴史を彩った。巨人では近年、矢野謙次(現日本ハム)、石井義人(元巨人)、高橋由伸(現巨人監督)らが1打席に勝負をかけた。1日に4打席回ってくるスタメン選手とは違い、1度しかチャンスが与えられない。その打席に野球人生をかける。

 阪神にはもう一人、忘れられない選手がいた。桧山進次郎選手。2013年シーズンを最後に引退した。2006年頃から代打でスタンバイするようになり、いくつも代打の球団記録を樹立していった。しかし、そんな数字や記録よりも記憶に残る代打屋だった。

 引退を決めた後、チームはクライマックスシリーズを広島と戦った。第2戦、5点ビハインドの9回2死一塁だった。桧山は代打として、現役最後となるバッターボックスへ。広島・ミコライオの154キロをライトスタンドへ本塁打を放ったのだった。意地を見せたベテランの一振りに甲子園は歓喜と涙が入り乱れた。22年間、最下位を何度も味わい、悔しい思い出ばかり背負ったベテラン。試合に敗れたが、「22年間で一番のホームランかもしれない」と全身に感動が走った。苦労を知る甲子園とファンが打たせてくれた。

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