【特集・イチロー4000本安打の価値】第2回 米メディア編

ピート・ローズ超えはすでに視界に入っている

 そして、ニューヨークの地元紙デイリー・ニューズは、その翌日の紙面で「イチローがピート・ローズ、タイ・カッブしかいない4000ヒットクラブに近付いた」と見出しを付けた。それはまるで、メジャー単独での記録と同等の価値があるとするかのような表現だった。

 だが一方で、日米通算の記録であることにドライな見方もあった。それらの現地報道は、4000本の価値自体を否定していたわけではない。イチローの成し遂げたことが偉大であると認めた上で、あくまで“注釈付きの特異な記録”として伝えたのだ。

 例えば、全国紙のUSAトゥデーは「合算の記録に対して同じ見方をするのは難しい。4000本安打にはメジャーでもピート・ローズ(4256本)とタイ・カッブ(4191本)の2人しか届いていないが、イチローの記録は明らかに違う種類のものだ」と報じた。その上で「メジャーとマイナーの合算でローズ、カッブ、スタン・ミュージアル、ハンク・アーロン、アーノルド・ジガー・スタッツの5人が4000本を記録している」と伝えた全米スポーツ専門局ESPNの報道を紹介している。

 これには、「日本のプロ野球はマイナーと同レベルなのか」と意見を挟みたくなる人もいるだろう。特に、スタッツはマイナーで3356本を記録しており、メジャーでは737本しか打っていない。ここに日本で1278安打、メジャーで2722安打(4000本到達時)のイチローの記録が並べられるのは、やはり少し違和感がある。

 ただ、日本のプロ野球に置き換えてみると、うなずける部分もある。韓国や台湾、さらにはメジャーから来た選手が、日本でそれぞれの自国リーグとの合算記録を達成した場合、ファンはどう思うだろうか。何より、イチロー自身も米メディアの取材に対して、ローズやカッブと同列に並べられるべきではないとの考えを明かしているのだ。

 とにもかくにも、ピート・ローズ超えはすでに視界に入っている。その時の米国内での反応は、おそらく今回と同じだろう。

 称賛と議論だ。

 だからこそ、全米で偉大な記録とされるメジャー通算3000本安打が、イチローにとって1つの大きな区切りとなるのは間違いない。

 さらに、日米通算4000本安打を達成した夜、イチローはインタビューで5000本安打到達の可能性を聞かれ「ゼロではない」と答えている。この尋常ではない数字に届けば、米国内での風向きは変わるのだろうか。イチローのバットなら、その答えを導き出してくれるかもしれない。

【了】

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フルカウント編集部●文 text by Full-Count

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