驚異の新人 ライアン小川はなぜ打たれないのか

小川が勝ち星を積み重ねられる理由とは?

 まずクローズアップされるのはその特徴的なフォームだ。高く足を上げるライアン投法によって小柄ながら角度がつき、150キロに近いボールを投げ込める。変化球もカットボールにチェンジアップ、フォークボールと多彩。だが、専門家は新人から活躍できている理由をもう少し違う角度から分析する。

 一つはそのパーソナリティー。セ・リーグのあるスコアラーはこう語る。

「小川投手はコントロールがいい。ただ、いいだけではなく投げミスが少ない。新人など若い投手は状況によってコントロールミスが発生する。ピンチはもちろんのこと、相手の打者が強打者だったり、監督や投手コーチらベンチの顔色をうかがった時もそう。ちょっとした心理の変化で、指先は微妙に変わるもの。しかし、彼は表情もまったく変えないし、そういう心の乱れもない」

 小川の場合は自分の投球に自信を持っていて、とにかく強心臓なのだという。確かに本人のコメントからも強気な性格はにじみ出ている。

 ただ、それだけならば、怖いもの知らずに立ち向かっていくだけの血気盛んな若者と変わりはない。このタイプなら過去にも数多くいたはずだ。ここで別のスコアラーはそのコントロールの良さについて細部まで解説してくれた。

「投手のコントロールというのはコースと高さに分けられる。これを両方、間違えた時に大きなダメージになる。いわば、甘いボール、失投というやつです。ただ、小川投手の場合はコースと高さ、両方を同時に間違えることがないんです。大半が狙ったところに投げられているし、片方だけとか、ちょっとミスをしても、片方が大丈夫だから大ケガをしない。それが安定につながっている」

 投手は回が進むにつれて、スタミナ切れなどが生じ、コントロールミスを犯す。内角低めを狙ったボールが真ん中に入ることなどはよくあることだ。だが、小川はその確率がかなり低いのだという。

 投手の生命線といわれるコントロール。広島の前田や楽天の田中将大らもコースと高さを失敗しない。要するに、小川は何年もプロでやって身につけられるような技術や度胸をすでに持っていたのだ。ライアンのような力強さに加え、2つのコントロールを兼ねそろえる23歳の青年。その新人離れした投球は、末恐ろしさすら感じさせる。

【了】

フルカウント編集部●文 text by Full-Count

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