2013年日本シリーズ 有言実行だった3人の男たち

藤田の胸に去来した特別な思い

 男はキッパリと言いきった。守備で動きの多いセカンド。無理をすれば、チームに迷惑がかかることも分かっていた。しかし男は宣言通り、決戦の舞台に立った。第6戦、第7戦と痛みをこらえて出場し、大観衆の喝采を浴びた。

 本当はプレーできる状態ではなかった。だが、藤田の胸には特別な思いがあった。

 2012年のシーズン途中に、セ・リーグの万年最下位チームの横浜から楽天へと加入。横浜のチームメートで仲の良かった内川聖一(ソフトバンク)、村田修一(巨人)が移籍した先で日本一になったのを見て、ハートに火がついた。

「優勝がしたい。そして、仙台のみなさんを元気づけたい」

 そう心に決めた藤田は、このシリーズで主役級の活躍を見せた。素晴らしい守備、確実性のあるバッティング、執念のヘッドスライディング。その熱いプレーがなければ、ここまで楽天は勝てなかっただろう。藤田は自分に言い聞かせた目標を、見事に実現させた。その雄姿に、地元ファンも元気をもらったに違いない。

 そして、星野監督。ロッテとのCS最終ステージを勝ち、優勝監督インタビューでこう叫んだ。

「永遠のライバル、巨人の胸を借り、頭を下げて、やっつけます」

 現役時代は中日の投手として、巨人に対してライバル心をむき出しに投げ続けた。中日、阪神の監督でもその姿勢は変わらなかった。日本シリーズは第7戦までもつれはしたが、その言葉通り、胸を借りて、巨人を倒した。下馬評は圧倒的に巨人有利だった。しかし、「強い巨人を倒してこそ、意味がある」とアンチ巨人の筆頭として戦い続けた星野監督。相手が巨人でなければ、ここまで熱くなることはなかったかもしれない。

 3人の男たちは、自ら言葉を発することによって退路を断った。あえて口に出すことで、自身を震え立たせた。踏み出す勇気さえあれば、不可能も可能になる――。楽天を初優勝へと導いた「有言実行力」は、そんな人生の教訓を教えてくれたに違いない。

【了】

フルカウント編集部●文 text by Full-Count

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