トライアウトに臨む選手たちの心意気 注目を集めるベテランと左投手

注目の的となっている左投手たち

 そしてもう一つ、他球団の注目の的は左投手である。10球団近いチームが「左腕不足」と嘆いている。左腕は野球人口の中でも絶対的に少ない。その中でもプロにまで到達できる選手は限られている。特に広島カープなどは戦力外になった左投手に着目し、動向を追っている。今回のトライアウトでも投手の目玉になるのは、やはり経験のある左腕だ。

 最近では阪神の加藤康介(35)が成功例として挙げられる。彼は2度の戦力外から這い上がった。2000年にロッテに入団したが、2007年にオリックスへトレード。2008年オフに戦力外となり、トライアウトに参加した。その年は1試合も登板していなかったが、左腕不足だった横浜ベイスターズが獲得を申し出で、入団。しかし、翌2009年には31試合に登板して1勝を挙げながら、チーム事情により2度目の戦力外となった。

 その際に救いの手を差し伸べたのは当時、左腕が不足していた阪神だった。そしてゴーグル姿の苦労人は、甲子園のマウンドで躍動した。移籍1年目、トータル10年目でプロ入り最多の49試合に登板。さらに今年はシーズンを通して活躍し、自身最多登板となる61試合を投げている。

 今年も戦力外の中にはソフトバンクを自由契約となった山本省吾投手(35)や、トライアウト受験はしないが吉野誠投手(35)、千葉ロッテの吉見祐治投手(35)など、経験豊富なベテラン左腕が多数いる。その他、若手にも左腕がおり、多くの視線が集まるだろう。

 一度、解雇された男たちは、野球をすることに飢え、今までがどれだけ幸せだったかを知る。そしてその苦い経験を力に変え、入団した先では感謝の気持ちを持ってプレーをする。だから数々のドラマも生まれる。果たして来シーズン、別の球団のユニホームを着てプレーしているのはどの選手だろうか。

trai

【了】

フルカウント編集部●文 text by Full-Count

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