野球にも「チャレンジ」!? メジャーのビデオ判定拡大とは

大きなニュースとなった「ビデオ判定の大幅拡大」

 大騒動の裏で、ベースボールは未来に向けて大きな1歩を踏み出していた。11月14日。フロリダ州オーランドでのオーナー会議最終日に、メジャーリーグ機構(MLB)のバド・セリグ・コミッショナー、ロブ・マンフレッド最高責任者(COO)が記者会見を行った。ここで、マンフレッドCOOが日米間で合意していたはずの新ポスティング・システム(入札制度)を取り下げることを表明。日本では「楽天・田中将大のメジャー挑戦が暗礁に乗り上げた」と蜂の巣をつついたような騒ぎとなった。

 しかし、米国内で大きなニュースとなったのは、この部分ではなかった。記者会見では「ビデオ判定の大幅拡大」という極めて重大な発表があったのだ。その中身は、野球でも「チャレンジ」を導入するなど画期的なもの。選手会と審判員組合の同意を得て、来年1月に正式に規則化する見込みだという。セリグ・コミッショナーは「全30球団(の関係者)がとてもエキサイトしている。これはメジャーリーグのために大きなステップ。非常に歴史的なことだ」と興奮を隠せなかった。

 メジャーリーグでは、2008年9月から本塁打の判定に限定したビデオ判定が行われている。ただ、今回、これを大きく変更。フィールド上での、ほぼすべてのプレーについてビデオ判定が導入される。

 対象外となるのは、ストライク・ボール、ハーフスイング、ファウルチップの判定のみとなる予定。さらに目を引くのが、両チームには1試合で原則2回ずつ「チャレンジ」と呼ばれる権利が与えられること。これはテニスなどと同様の方式で、疑わしいプレーに対して監督が審議要求を出来るというものだ。ビデオで確認した結果、判定が覆れば「チャレンジ」権は減らない。そして、対象となったプレーは場内のスクリーンでも流される。

 例えば、誤審が多い一塁ベース上のアウト・セーフの判定は、今回の変更で劇的に改善されるだろう。2010年6月2日のタイガース―インディアンスでは、あまりにも有名な誤審騒動があった。タイガースのアーマンド・ガララーガが9回2死まで1人の走者も出さず、最後の打者もファーストゴロに打ち取った。ベースカバーに入り、タイミングは完全にアウトだったが、判定はまさかのセーフ。内野安打となり、MLB史上21人目の完全試合を逃した。

 試合後に映像を確認した審判歴22年のジム・ジョイス塁審は、自らの判定が「大誤審だった」と認めて、涙ながらに謝罪。ガララーガ本人にも直接わびた。すると、当時28歳の右腕は「誰しも完全ではない。間違いはある。彼が1番つらい」と話し、ジョイス審判を擁護した。MLB史上最悪とも言われる誤審は、2人の素晴らしい人間性により美談となった。しかし、ガララーガとジョイスでなければ、結末は変わっていただろう。今回のビデオ判定拡大で、こんな悲劇も起こらなくなる。

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