ロイヤルズへトレード 青木宣親が大人気の理由と新天地にもたらすもの

地区制覇に向けて本気のロイヤルズ

 だが一方で、実はブルワーズは当初から青木を残す気はなかった可能性が高い。今年7月、2011年にナ・リーグMVPに輝いたライアン・ブラウンが薬物規定違反で65試合の出場停止処分を受けると、代わりにレフトに入ったクリス・デービスが大ブレークした。そこで、デービスをそのまま左翼に残し、出場停止から空けるブラウンをライトにコンバートするプランが急浮上。センターのカルロス・ゴメスを含めて来季の外野は埋まった状態となっていた。となると、年俸が安く、どこの球団でも手を出しやすい青木はトレードに出すのに最適な人材だ。そのためだけでも、オプションを行使する価値があった。結果として、崩壊していた投手陣を立て直すために、この「超優良助っ人」と交換でスミスを獲得した。

 一方で、ロイヤルズにとっても的確な補強だった。今季は7月に不調が続いたジェフ・フランコーアを解雇。メジャー2年目のデビッド・ロウがライトで奮闘したものの、力不足は否めなかった。さらに、主に1番で出場して初のオールスター出場を果たしたアレックス・ゴードンは出塁率が3割2分7厘と、リードオフマンとしては物足りない数字に終わっている。この2つの課題を同時に解決してくれる選手として、青木はまさにうってつけの人材なのだ。米メディアの報道では「青木を1番に置いて、ゴードンの打順を後ろに持っていくことになる」とされている。仮にゴードンが下位に座るようになれば、相手にとっては厄介な打線になるだろう。

 若手の成長が著しいロイヤルズは今季、長年の低迷から脱して久々にプレーオフ争いに加わった。しかし、最後の最後で脱落。青木には、世界一に輝いた1985年以来のプレーオフ進出に向けて切り札としての期待がかかる。球団は、ジャコビー・エルズベリーの契約合意でヤンキース入りの可能性が低くなった同じ外野手のカルロス・ベルトランにも興味を示しているが、地元紙は「獲得への動きに影響はないだろう」と報じている。ベルトランはDHとしても起用できるだけに、青木は不動のリードオフマンとして使われそうだ。

 地区制覇に向けて、ロイヤルズは本気だ。青木にとっては、くしくも移籍先の候補に挙がっていたタイガースと同地区で戦うことになったが、強敵を倒して地区制覇を目指すという環境には、むしろ燃えるものがあるかもしれない。さらに、来季も活躍を続ければ、再来年は大型契約を勝ち取ることが確実。青木とロイヤルズにとってハッピーなトレードとなることは間違いなさそうだ。

【了】

フルカウント編集部●文 text by Full-Count

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