青木宣親の電撃トレードはなぜ起こったのか

ブルワーズの2年間で高い評価を得た青木

 実は、カノは11月28日に母国ドミニカ共和国でWBCの優勝パレードに参加した際、地元メディアの取材に「誰も私の口からは(要求を)聞いたことがないはずだし、これからも聞かないだろう」と、自分自身は3億1000万ドルもの大金を望んでないとする意味深な発言をしている。もちろん、1つのパフォーマンスだという取り方は出来る。ただ、これが事実だとしたら、カノも手が及ばないところで話が進んでしまった可能性はある。だから、大型契約でのマリナーズ入りというこれほど衝撃的な移籍が成立したと考えると納得がいく。

 そして、ここから市場が大きく動いた。青木のトレードは、カノの契約合意よりも1日早く発表されたが、ロイヤルズとブルワーズがすでに情報をつかんでいたとされている。カノが移籍したことによって、パワー不足を補いたいヤンキースは、直後にカルロス・ベルトランの獲得に合意。このベルトランを狙っていると言われていたのが、ロイヤルズだった。

 ベルトランが獲得できないと分かった段階で、ロイヤルズは“保険”として水面下で平行して交渉を続けていた青木にターゲットをチェンジ。一気にトレードを成立させたというわけだ。“保険”といえば聞こえはあまり良くないかもしれないが、スター選手のベルトランの次に候補に挙がるほど、青木はブルワーズでの2年間で高い評価を得ていたことになる。本人はこの移籍を「ステップアップ」とも表現しているが、現在のロイヤルズが優勝を狙えるチームであることは確かだ。

 このような「玉突き」でのトレード成立は、メジャーならではの現象と言える。そして、今オフにさらなる大型トレードが成立する可能性も十分にある。現地時間9日には、球団関係者や代理人が一堂に会するウィンターミーティングがフロリダ州レイクブエナビスタで開幕。選手の契約、移籍に関する交渉が活発に行われる。

 外野手の補強が続き、戦力が有り余っているヤンキースのブライアン・キャッシュマンGMは、生え抜きのブレット・ガードナーについて「移籍させるのは厳しい」と難色を示している。ただ、何かをきっかけに一気に状況が変わるかもしれない。イチローの去就にも大きな影響があるだけに、注目が集まる。これだから、メジャーのストーブリーグは面白い。

【了】

フルカウント編集部●文 text by Full-Count

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