涌井秀章の加入でロッテ投手陣は2005年の再現なるか

涌井の加入で厚みを増したロッテの先発投手陣

 西武からFA宣言をした涌井秀章投手(27)のロッテ入りが決まった。2年で4億4000万円と出来高。背番号は西武入団時につけた「16」で合意したと見られている。「出身地の千葉でプレーできるのはうれしい。お世話になった西武ライオンズには感謝の気持ちでいっぱいです」と新しい一歩を踏み出した。

 これでロッテのローテーション候補は手厚くなった。涌井の高校(横浜高校)の1年先輩の成瀬善久を筆頭に、唐川侑己、西野勇士、古谷拓哉、藤岡貴裕、グライシンガー、即戦力ルーキーの石川歩。この8人が5人から6人の開幕ローテ争いをする。ハイレベルな戦いになるだろう。

 ただ、投手王国というには時期尚早だ。エース・成瀬は左肩を痛め、今季6勝に終わっている。唐川、西野、古谷は成長の跡を見せたが9勝どまり。グライシンガーや石川もどこまで計算できるかは未知数だ。

 一方で、これだけの先発投手がいれば、1人、2人が怪我をしたり、不調に陥っても、その穴を埋められる可能性がある。そういう意味では人数を確保できているのは非常に大きい。チーム状態が良ければ、連敗もしにくいだろう。各投手が一定の間隔を保って、先発のマウンドで投げられるメリットもある。

 思い出されるのは、ボビー・バレンタイン監督が率いた当時の2005年だ。エースの渡辺俊介が6月あたりに右肘を負傷。その際、無理をすることもできたが、監督や投手コーチと相談し、導き出された答えが「無理なく休め」だった。

 結果的に渡辺俊介は15勝をマーク。さらに小林宏之が12勝、外国人投手のセラフィニが11勝、清水直行と小野晋吾、当時新人の久保康友が10勝と、ローテ投手6人が2ケタ勝利をするという快挙を演じている。渡辺俊介が治療に専念して、登板を飛ばしても、それを埋められるだけのスタッフが揃っていたのが大きかった。先発陣が充実していたことで、エースの離脱が戦力の低下につながらなかったのだ。

 この層の厚さが強みとなり、ロッテは31年ぶりの日本一を達成。YFK(薮田・藤田・小林雅英)と呼ばれた強力中継ぎ陣の存在も大きかったが、6人が2ケタ勝利を挙げた先発陣の存在は際立っていた。

 一方、2006年以降の2ケタ勝利数を見ていくと、

06年:清水(10勝)、小林宏(10勝)の2人
07年:成瀬(16勝)、小林宏(13勝)の2人
08年:清水(13勝)、渡辺(13勝)の2人
09年:成瀬(11勝)の1人
10年:成瀬(13勝)、マーフィー(12勝)の2人
11年:唐川(12勝)、成瀬(10勝)の2人
12年:成瀬(12勝)、グライシンガー(12勝)の2人

 そして今年はついに0人だったが、伸びしろのある投手もいる。涌井の加入で厚みの増した新ロッテ先発陣は2005年以来の3人以上の2ケタ勝利が誕生する可能性もあるだろう。成瀬の復帰、さらに石川がどの程度、勝ち星を伸ばせるか。そして、先発復帰する涌井がどこまで期待に応えられるのか。来季のロッテの浮沈はこの先発陣にかかっている。

【了】

フルカウント編集部●文 text by Full-Count

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