今季引退の男が魅せた感動の瞬間 愛息の言葉を力に変えて

素朴な子供の質問を力に変えた

 1つ目は、上記にあるような落胆の言葉を聞いたときだ。せっかく応援してくれていた子供たちが落ち込みながら声をかけてくると、その言葉は心に突き刺さるという。

 2つ目は、自分ではなく、同僚の若い選手のファンになってしまったとき。「サインとかもらってきて、とか言われると、後輩の選手なのにもらいにいくのがちょっと辛いよね」と笑う選手もいた。そうは言いつつ、わが子の願いだからと、先輩が後輩に頭を下げることもあるという。

 そして最もこたえるのが3つ目だ。試合に出ていないときや2軍で調整しているときに「どうして、パパは試合に出てないの?ユニホームを着てないの?」とかけられる言葉。

 小池もそうだった。ある年のこと。不振で2軍落ちしていた時期にファームの試合が終わって帰宅すると、息子に「どうして……?」と聞かれたという。説明をして、納得してくれたが、父親としての悔しさがあった。それで涙が止まらない夜もあったという。

 ただ、小池の場合は、そんな素朴な子供の質問を力に変えた。数年前、小池は1軍への昇格を果たすと、サヨナラ打を放ち、チームの勝利に貢献したことがあった。その際、本来ならば、喜ぶはずが、下を向いていた。「子供になんとか見せてあげたくて」。顔を上げるとその目は真っ赤に染まっていた。

 小池にはそんなふうに、父親の意地を見せた試合が何度もあった。最後の引退試合だけでなく、毎日、家族のために戦っていたのだ。

 格好いいパパのときもあれば、そうでないときもある。パパはいろいろと大変だが、それでも歯を食いしばって戦う男は格好がいい。家族の絆を強く感じさせたプレーヤーの一人だった小池は今年限りで現役を退くことになったが、彼のような熱いハートを持った選手が来季も出てきてくれることに期待したい。

【了】

フルカウント編集部●文 text by Full-Count

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