米国内で極限にまで膨れ上がった「マサヒロ・タナカ」像は果たして虚像か、実像か

謎に包まれた田中将大という存在

 2年前のダルビッシュ有(レンジャーズ)の場合も、松坂のケースに似ている。当初メジャー移籍が予測されていた2010年オフにアーン・テレム氏、団野村氏と代理人契約を結び、翌2011年は開幕当初からオフの目玉選手として米メディアから注目を浴びた。スポーツ専門局ESPNが何度となくダルビッシュ特集を組む中、「無数の変化球を投げる男」、「マウンド上の魔術師」などと紹介され、イメージが一人歩きする部分もあったが、そこには必ず実体が伴っていた。これもやはり、ボラス氏まで派手に立ち回らないまでも、着実に選手のイメージを浸透させていくテレム氏の手腕があったからだろう。

 さて、話を今回の主役、田中に戻そう。アメリカ側から見ると、松坂やダルビッシュに比べ、田中は謎に包まれた人物だ。第一に、本人の肉声が伝わってこない。昨オフの契約更改時に「将来的に、そういうところ(メジャー)でやろうという気持ちが芽生えたので、早く伝えようと思いました」と、近い未来にもメジャー移籍を視野に入れていることを明らかにしたが、その時期については語らず。今季も「楽天日本一」だけを目標に掲げ、自らの去就については、一切口に出すことはなかった。

 もちろん、日米の報道は今オフのメジャー移籍を前提として、勝ち星が積み重なるにつれて加熱していくわけだが、本人の意思が見えてこない。早々に代理人が選考されなかったことで、選手のイメージを交通整理すべき人物がおらず、ほとんど実像を伴わない形でイメージが膨張。「ある球団の幹部によれば……」、「ある球界関係者の話では……」という伝聞の報道が、伝言ゲームの原理で尾ひれをつけ、時には曲解されながら広まっていった。

 新ポスティングシステムの締結に想定外の時間が掛かったことも、田中を巡るドラマにスパイスを効かせた。本人が正式に意思表明をしたのは、12月17日のこと。本来ならば、日本シリーズが終わった11月上旬にも「メジャーに移籍したい」という肉声が聞こえてきてもおかしくなかったが、新制度の締結を巡り、まずはNPBと選手会の間で一悶着あり、今度はMLB内で喧々諤々があり。二転三転しながら、最終的にまとまった案は、入札金は2000万ドルを上限に日本の球団が指定し、指定額を払う意思のある全球団と交渉できる、というものだった。

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