メジャー選手もぼやく田中将大の大型契約 新ポスティングシステムへの疑問の声は果たして妥当か?

新制度も完璧なルールではない

 今オフのFA先発投手がこれに当てはまる。先発ローテの1番手、2番手を担えるであろうFA投手の数は少なかったが、求める球団が多かった。田中は今オフのFAランキングの中でもトップ10に食い込むほど評価は高く、獲得意志を示す球団が多かった。商品価値=契約は自然とつり上がり、7年1億5500万ドルという値段にまで達した。もし田中が今オフではなく来季オフにポスティングされていたら、まったく違う値段がつくだろう。需要と供給のバランスが売り手側に有利な状況で、田中という商品自体も旬を迎えた状態だった、さらには黒田博樹や岩隈久志、ダルビッシュ有らが、日本人先発投手の信頼性を高めたからこその結果と言える。

 実際、新制度は旧制度に比べ、メジャー各球団とポスティングされた選手に対し、より大きな自由度を与えている。メジャー球団にしてみれば、これまで最高額を提示しない限り、交渉の席につくこともできなかったが、現状では、指定額を払う意思表明をすれば、選手との交渉に臨むことができる。高額な契約をオファーできなくても獲得意思の熱意だけは伝えられるし、トレード制限の項目をつけたり、出来高の項目を増やしたり、選手の育成方針を説いたり、契約に工夫を凝らすことで、折衷案を見いだせる可能性が出た。

 選手の立場から見れば、単純に選択の幅が広がった。自分の意思とは関係なく、最高額で入札した1球団と交渉するしかなかった旧制度よりも、新制度の方が自分の意向を反映しやすい。最高契約額をオファーした球団ではなくても、かねてよりプレーしてみたいと思っていた球団からオファーがあれば、その球団と契約する可能性も十分にある。

 さらに、複数球団と交渉できれば、2010年オフに起きた岩隈久志(当時楽天)とアスレチックス、2011年オフに起きた中島裕之(当時西武)とヤンキースのような破談劇はなくなることになる。破談の可能性がなくなるだけでも、選手にとっては大きなメリットになるだろう。

 もちろん、新制度が完璧なルールに仕上がっているわけではなく、改善や見直しの余地はあるだろう。メジャーでは、来季オフは前田健太(広島)がポスティング制度を利用するのではないか、という予測が広がっている。もしこの予測が現実のものとなった場合、前田も驚くような契約を獲得するのか。それは、その時の需要と供給のバランスが大きく物を言うはずだ。

【了】

佐藤直子●文 text by Naoko Sato

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