マー君を成功に導くキーマン・黒田博樹 早くも生まれつつあるヤンキースの日本人師弟関係

喧噪に惑わされず、マイペースの調整を続ける黒田

 黒田自身もドジャースで苦しんだからこそ、親身になれる。渡米1年目に自分が困ったことについて聞かれると「やっぱり1番は休みがないのがしんどいですよね。(日本の)4勤1休、5勤1休のキャンプと違って、毎日来て、毎日ユニホーム着てやるわけですから。そういう部分で体力的、プラス、メンタル的にも疲れてくるので。そこをうまくリフレッシュしながら、自分で強弱つけてやっていくのが大変かなと思います」と振り返った。

 当然、言葉が通じないことでのストレスもあった。ただ、黒田は1人でこの壁を乗り越えただけに、田中は本当に恵まれた環境に身を置いている。さりげないサポートには、メジャーで確固たる地位を築いてきた男の優しさが溢れており、ルーキーは感謝しきりだ。

「やはりメジャーでも何年もずっとやられていて、ヤンキースでもローテーションを守られて活躍されている選手と一緒にできるのは自分にとってありがたいです。いい環境の中でやらせていただいていると思います。コーチが説明してくれるのも全然分からないので、非常に助かってます」

 今月11日のヤンキース入団会見の際には、ルーキー右腕はイチローと黒田が心強い存在かを聞かれて「そう思います」と答えた。特に同じ先発投手の黒田については「色々と疑問に思ったこと、これってどうなんだろうと思ったことは聞ければいいなと思います」と話していたが、先輩の存在の大きさは想像以上だったようだ。キャンプ初日、「(黒田は)優しいと感じますか?」と報道陣に聞かれた田中は、「はい」とうなずいた。

 黒田は今キャンプのテーマを「1番は飛ばしすぎないこと」とする。

「ヤンキースに来て1年目もそうでしたけど、どちらかというと自分を見せないといけないというか、そういう部分でちょっとキャンプの中で飛ばしすぎてしまうところがある。3年目なので、そこを注意というか、抑えられると思う。開幕をマックスに持って行ければ1番いいんですけど、それを1年間通すというのはなかなか難しいので、それを自分の頭の中で分かっていればいいかなと思います」

 フィーバーの渦中にいる田中をサポートしつつ、あくまで自分はマイペースで調整を続ける。昨年はシーズン終盤で失速しただけに、終盤の優勝争い、10月のプレーオフまで見据えて、体を作り上げていくつもりだ。その姿は、この先も間違いなく田中の見本になる。

 もちろん、田中には田中なりのやり方があるだろう。ただ、初体験のメジャーで困ったことがあれば、悲願の世界一を目指す黒田の背中を追いかければいい。その先には、成功への道筋がはっきりと見えてくるはずだ。

【了】

フルカウント編集部●文 text by Full-Count

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