今季のパ・リーグが展開する画期的な取り組み 未来志向型メディアの「パ・リーグTV」が球界の常識を変える?

球界の長い歴史上初めてとなる、リーグとしての巨額投資

 以前、PLMの関係者に取材した際、こんな話を聞いたことがある。

「プロ野球界には今まで、投資して収益を上げるという一般商取引の考え方が希薄でした。どこかで誰かに売上を立ててもらって、分け前を得ることが事業のベースになっていた。パ・リーグTVはPLMという組織で事業計画を作り、回収見込みを立てたうえで巨額の資金を投資して、回収しようとしています。新しい技術とサービスに対して、リーグとして自主的に巨額投資するという動きは、球界の長い歴史上でも初めてだと思います」

 パソコンやスマホ、タブレットの登場で、世の中の流れは様々な点で変わってきている。例えば、テレビの見方だ。これまでは、映像を見るデバイスはテレビくらいだったものの、現在はパソコンやスマホ、タブレットも選択肢にある。

 テレビ局の設定した放映時間に家でテレビを見るのではなく、自分で録画やダウンロードした映像を再生するほうが、都合がいい点も多い。パ・リーグTVは、そうした世の中の流れや視聴者のニーズに合致するものだ。明らかに、未来志向のメディアである。

 様々な視点から球界を見渡すと、旧態依然とした体制がファンにとってマイナスに働いている点が少なくない。例えば、冒頭のハイライト動画のサービスをしているのは、なぜパ・リーグだけなのか。

 プロ野球ファンにとってパ・リーグの取り組みは間違いなく歓迎できるものであり、この流れが12球団に広がっていってほしい。

【了】

中島大輔●文 text by Daisuke Nakajima

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材し、『日経産業新聞』『週刊プレイボーイ』『週刊東洋経済』などに寄稿。著書に『人を育てる名監督の教え すべての組織は野球に通ず』(双葉新書)

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