時には監督にも直談判 レンジャーズを牽引するエイドリアン・ベルトレの魅力

ワシントン監督も時に苦笑い

 先日ヤンキースから戦力外通告された元広島のアルフォンソ・ソリアーノは、毎日プレーするのが大好きな人だった。キャリア絶頂だったカブス時代、いつも「ゲンキ?」とハツラツとした様子で声を掛けてきたが、時折「私、今日はちょっとゲンキない」と言うことがあった。

 そういう時は決まって先発メンバーから外れた時。監督がよかれと思って休養日を与えると「今日はプレーできないから悲しい」と言う。少しくらい体が痛くても、プレーできる喜びの方が大きい。肉離れをしっかり処置しなかったため、太ももの一部がポコッと陥没していたが、ある意味、野球に対する愛情から生まれた勲章だったのかもしれない。

 レンジャーズにも、休みを与えられても、ありがたいと思わない人がいる。メジャー17年目のベテラン三塁手エイドリアン・ベルトレだ。

 先発メンバー表に自分の名前がなかった時、もしくは指名打者(DH)だった時、この人の場合、悲しまない。怒るのだ。怒って、監督室に直談判しに出掛ける。その結果、レンジャーズで年に2、3回発生するのが、先発メンバーの変更だ。試合開始30程前にプレスボックスに、こんな放送が響き渡る。

「レンジャーズ、ラインナップの変更です。4番DHベルトレが三塁に、7番三塁△△がDHになります」

 このアナウンスが流れた時は、ベルトレの勝ち。ワシントン監督に直談判しに行った結果、監督を言い負かして三塁出場を勝ち取った時だ。

 メディアに対してオープンなワシントン監督は、試合後「ベルトレとの交渉に負けたよ」と“負け”を認めて苦笑いを浮かべる。実は、監督が直接交渉を認めるのは、限られた選手だけだ。チームリーダーとして信頼の厚いベルトレには、この特権が認められている。そして何よりも、毎日三塁を守って全力プレーをしたい、という気持ちを忘れないベルトレの姿勢に、監督が敬意を払っている証拠だ。そうでなければ、若手選手たちに「ベルトレを手本にするように」とは言わないだろう。

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