元同僚が語る「努力の人」稲葉篤紀 一流の才能の裏に隠された“フォア・ザ・チーム”の意識

なぜ稲葉は第一線で長く活躍できているのか

 メジャーへの挑戦は上手くいきませんでしたが、あのときヤクルトが“戻ってこい”と言っていたらどうなっていたかな、と思うときはありますね(笑)」

 日本ハムへ移籍してからの稲葉は、ほぼ毎年フル出場を続け、チームの中軸として欠かせない戦力となった。2006年には念願の日本一を達成、自身も日本シリーズMVPに輝いた。2007年には首位打者を獲得、2012年には2000本安打を放ち、名球会入りも果たした。

 飯田氏から“努力の人”と呼ばれたヤクルトへ同期入団した稲葉と宮本は、2012年に揃って2000本安打を達成している。

「稲葉と宮本がヤクルトへ入ってきたとき、すでにヤクルトは優勝を2度経験し、ある程度チームは出来上がっていました。そこで彼らが出場機会を得られ、その後長くプロ野球選手として活躍できたのは、結局野村監督の教えだと思います。

 稲葉はチームのために戦える選手だと言いましたが、当時のヤクルトはそういう選手を使って、チームの勝利を第一義に考えるチームでした。僕にしろ宮本にしろ、そして稲葉にしても、そこで試合に出るためには何をしなければならないのかを考え続けましたし、それが実践できたからこそ、出場機会を得ることができて、選手としての基礎が作り上げられたんだと思います」

 稲葉は引退会見で「プロ野球選手を指導する夢がある。野球に恩返しがしたい」と語っている。現役のときからその姿勢で周囲に多大な影響を与えてきた稲葉だけに、指導者としての活躍も楽しみだ。

【了】

飯田哲也プロフィール

スポーツコメンテーター。1968年東京都出身。1987年に捕手としてヤクルトスワローズに入団、主に外野手としてヤクルトの1番バッターを長く務めた。2005年からは2年間楽天イーグルスに在籍。2006年に現役を引退すると、古巣ヤクルトで2013年まで守備・走塁コーチを務めた。
飯田哲也オフィシャルブログ

フルカウント編集部●文 text by Full-Count

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