日本ハムが2年連続で盗塁王を輩出へ リーグダントツ37盗塁・西川遥輝の凄さ

昨季は陽が球団史上初めて盗塁王に

 足にはスランプがない――。それは野球界でも使い古されてきた通説。ところがそれは正確な言い回しではないようだ。日本ハムの白井一幸・内野守備走塁コーチは「スランプがないのはスピードのこと。盗塁は技術。試合の流れを読む。状況を把握する。そういう頭が必要」。ただ速いだけでは必ずしも有効な攻撃にはつながらない。

 そして相手もプロだ。投手のクイックモーション。けん制。捕手の肩。最警戒された中で塁を盗むのは容易ではない。それでも西川は「警戒されていてもスタートは切れます」。自信を持って言い切る。

 2014年シーズン。一気にその才能を開花させた……わけではない。昨季もダイヤモンドを駆け回っていた。5月まで盗塁数リーグ1位をキープしていた。だが、6月に戦線を離脱。本塁でのクロスプレーで左前十字靱帯の付着部を剥離骨折した。約2か月、戦いの場から遠ざかった。この年、盗塁王の座を射止めたのがチームメートの陽岱鋼。球団史上初めて走塁のスペシャリストに与えられるタイトルをつかんだ。

 西川にとっては、手のひらからこぼれ落ちた韋駄天の称号。悔しさは相当だったはず。盗塁王獲得は今季の目標になった。自らも開幕前から、そう口にしてきた。そしてそれはもう、手の届くところまで来ている。

 世界の盗塁王・福本豊は過去に、こう言ったという。盗塁を決める秘訣とは……。「まずは塁に出ること」。野球界では、あまりにも有名なエピソードだ。

 今季のパ・リーグはソフトバンクとオリックスの2強状態。リーグ戦はすでに佳境にあり、日本ハムのCS(クライマックスシリーズ)進出は確実。短期決戦こそ“不調知らず”の足技は大きな武器になる。西川の出塁率とチームの勝率はリンクする。日本シリーズ進出、そして日本一。西川が下克上の“足掛かり”になる。

【了】

J・T●文 text by J・T

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